インドネシアの移転価格税制⑯ ~役務提供に係る移転価格ポリシー~

2017 年 6 月 22 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。前回のコラムではマスターファイルの核となる“移転価格ポリシー”についてお話しいたしました。今回は前回お話しした移転価格ポリシーのうち、“役務提供に係る移転価格ポリシー”について更に落し込んで考えてみようと思います。

前回はマスターファイルに実際に記載される移転価格ポリシー(役務提供)の具体例を以下のとおり記載しています(http://futureworks-inc.jp/blog/589)。

【移転価格ポリシー(役務提供)具体例①】

契約内容:業務委託契約

役務提供者:日本親会社

役務受益者:インドネシア子会社、タイ子会社、メキシコ子会社、ブラジル子会社

役務内容:役務提供者は、役務受益者が販売活動及び一般管理活動を適正に行うための各種サポート及び、必要な知識を得るための役務受益者社員に対する教育・指導を行う。

対価の額の設定方針:役務提供者から派遣した出張者への日当、交通費、宿泊費等の関連費用については、実費額を役務受益者が支払う。

もちろんこちらのポリシーは実際に作成したマスターファイルから少し簡易化してもってきているものです。実務上はこのポリシーについてどこまで記載するか(どのような考え方によって各国の移転価格税制に対応するか)の検討が必要で、例えば次の具体例についても移転価格ポリシー(役務提供)に該当します。

【移転価格ポリシー(役務提供)具体例②】

契約内容:業務委託契約

役務提供者:ベトナム子会社

役務受益者:日本親会社

役務内容:役務受益者が顧客に対して行うシステム開発のうち、一部を役務提供者に委託する。役務提供者は役務受益者に対してシステム開発サービスを提供し、役務受益者より対価を収受する。

取引フロー:取引フロー図を挿入

適用する移転価格算定方法:TNMM(取引単位営業利益法)

【価格設定方法の内容】

  • 役務提供者が使用する利益水準は総費用営業利益率とする。
  • 役務提供者はシステム開発会社として限定的な機能、リスクを有している。
  • 役務受益者は当システム開発に関する無形資産を保有している。
  • 当国外関連取引における超過収益及び損失は役務受益者が負担する。
  • 役務受益者は両者(役務受益者及び役務提供者)が保有する機能、リスク、資産に応じ、適切な業務委託料を設定する。

移転価格の検証方法:総費用営業利益率が、ローカルファイルの独立企業間利益率レンジに収まる場合には、当取引価格はPMK213及びその他移転価格関連法令に基づき設定されていると判断できる。

もちろん移転価格ポリシーが簡易になりすぎて、マスターファイルとローカルファイルが一貫性のないものになってしまっては意味がありません。より説得力のある移転価格ドキュメントを作成するためには取引の類型毎に具体例②のポリシーを採用すべきであるともちろん思います。資金力がある上場企業などでは具体例②のようなポリシーを取引の類型毎に網羅的に作成し、ポリシーを基にマスターファイル及び各国のローカルファイルを作成するべきでしょう。

ただし、インドネシアにおいてマスターファイル及びローカルファイルの保存が求められている企業には中小企業も多く含まれます。このような中小企業が移転価格ドキュメントを作成するためにいくらお金をかけることができるのかも同時に考えなければなりません。各国に展開している子会社との取引に関しその取引類型毎にポリシーを作成し、マスターファイルを作成し、各国のローカルファイルの作成を行う場合には1,000万円以上のお金がかかってしまうこともざらにあります(移転価格税制の追徴課税額はそれ以上に高額になるリスクがあります)。

作成義務がある会社が作成しない場合には、当局による推計課税がなされるリスク及び追徴税額の100%以上の課徴金が課されるリスク、期間に応じた月利2%の利息が課されるリスクがあり、その金額的なリスクは膨大です。そのため会社の規模に合わせて移転価格ドキュメントの内容が変わってくることはしょうがないことだと感じています(内容と金額のバランス)。

※大切なことは、移転価格課税リスクが高い企業が今後どのようにリスクを低減していくかのアプローチをどこまでコンサルが一緒に考えてくれるかだと思います。特に中小企業は社長が自由に値付けをしていることも多く、作成初年度は移転価格リスクが高いことも多いので。

さて、先週インドネシアにおいて移転価格セミナーを開催しましたが、タイにおいても移転価格セミナーを開催します。タイはBEPSプロジェクトに則った移転価格税制の改正が未だなされていませんが、来年度にでも改正があると言われています。そのためにこのセミナーにおいては、タイの移転価格税制がどのように変わるか、改正後どのようなものを作成しなければならないか、など実務に沿ったものをお話できればと考えています。現在若干数の席が空いており、かつ、ご興味がある方が多ければ少し席を増やすことも可能ですので、お気軽にご連絡ください。

【セミナー情報】
http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/16251818.html

【お申し込み先】

info@bridgenote.asia

※片瀬宛でお問合せ下さい。

インドネシアの移転価格税制⑮ ~移転価格ポリシー~

2017 年 6 月 16 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今日はマスターファイルの核となる“移転価格ポリシー”についてお話いたします。まずはインドネシアPMK213におけるマスターファイルに記載すべき項目から確認してみましょう。

【マスターファイル記載事項】

こちらの資料の中の赤字の部分にご注目ください。その他の部分に関しては多国籍企業グループの概況情報となるためにイメージもつきやすいのですが、この移転価格ポリシーで多くの企業が困ることになります。移転価格ポリシーといわれても何を記載したら良いのか全くイメージが湧きません。

イメージが湧かないものは、得てしてとても難しいものと認識してしまいがちなのですが、、、移転価格ポリシーを作成すること自体は特に難しいものではありません。各国と整合を取りながら税務リスクを低減するポリシーを作成することが難しいのです。

例えば、役務提供に係る移転価格ポリシーを次に記載してみます。

移転価格ポリシー具体例

契約内容:業務委託契約

役務提供者:日本親会社

役務受益者:インドネシア子会社、タイ子会社、メキシコ子会社、ブラジル子会社

役務内容:役務提供者は、役務受益者が販売活動及び一般管理活動を適正に行うための各種サポート及び、必要な知識を得るための役務受益者社員に対する教育・指導を行う。

ポリシー:役務提供者から派遣した出張者への日当、交通費、宿泊費等の関連費用については、実費額を役務受益者が支払う。

この例は業務委託契約という関連会社間の役務提供契約に関して、各子会社はいくらのFeeを支払わなければならないかを表すものです(ポリシー = 対価設定方針)。この場合は実費額の支払いとなっていますね。これが移転価格ポリシーです。移転価格ポリシーとは関連会社間の各種契約(現在・未来含む)をどのような考え方を基に締結しているか、その考え方そのものとなります。

大切なことはポリシー事態を設定することではなく、対価の設定を“実費額”として各国で問題にならないかどうかということです。各国の税務当局はマスターファイルを否認するのではなく、マスターファイルの移転価格ポリシーを基に作成した各国のローカルファイルを否認するのです。

例えば、インドネシアやタイでは、赤字企業がこのようなマネジメントフィーを支払うことは否認されるリスクがあります。各国には各国のルールがあり、そのルールとは法律で求められていることや慣行で行われていること、それらを網羅的に検討して移転価格ポリシーを作成しなければなりません。

さて15回目の今回はマスターファイルに記載される移転価格ポリシーについてお伝えいたしました。移転価格ポリシーを作り込み(ロイヤルティやマネジメントフィーの)料率まで記載することも考えられますが、あくまでもポリシーは考え方の提示であるために作り込みすぎない方が(ある程度の振れ幅をもっていた方が)個人的には良いかなと思っています。

また、インドネシアに続いてタイにおいても移転価格セミナーを開催します。タイはBEPSプロジェクトに則った移転価格税制の改正が未だなされていませんが、来年度にでも改正があると言われています。そのためにこのセミナーにおいては、タイの移転価格税制がどのように変わるか、改正後どのようなものを作成しなければならないか、など実務に沿ったものをお話できればと考えています。現在若干数の席が空いており、かつ、ご興味がある方が多ければ少し席を増やすことも可能ですので、お気軽にご連絡ください。

【セミナー情報】
http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/16251818.html

【お申し込み先】

info@bridgenote.asia

※片瀬宛でお問合せ下さい。

インドネシアの移転価格税制⑭ ~利益率レンジ~

2017 年 6 月 9 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。移転価格税制において比較対象企業の母集団をデータベーススクリーニングよりピックアップし、定量分析及び定性分析を経て比較対象企業を抽出した後に重要になる概念が利益率レンジです(データベーススクリーニングについての詳細は:http://futureworks-inc.jp/blog/580)。

通常データベースより選定される比較対象企業は、1社ではなく複数社であり、これらの比較対象企業の営業利益率を独立企業間の利益率レンジとして、検証対象企業の利益率との比較検討を行います。この独立企業間の利益率レンジに関して、OECDガイドラインにおいては次のように記載されています。

「独立企業間価格幅より(パラグラフ3.55)」

取引条件が独立企業のものに一致するか否かを判断する上で最も信頼できる単一の数値(例えば、価格又は利幅)を得ることによって、独立企業原則を適用することができる場合がある。しかしながら、移転価格の算定は厳密な科学ではないため、最も適切な方法を適用した結果、その全てについて相対的に同等の信頼性があるという複数の数値からなる幅が生み出される場合も多くある。このような場合、この幅を構成している数値の間にみられる差異は、一般に、独立企業原則の適用は独立企業間であれば成立したであろう条件の近似しか生み出さないという事実によりもたらされたものといえよう。幅の中の様々な数値は、比較可能な状況の下で比較可能な取引を行う独立企業が当該取引につき全く同一の価格を設定しない場合もあるという事実を表しているといえよう。

この文言は弊社の作成するローカルファイルにおいても本文中に含まれるぐらい利益率レンジの考え方の根幹となる部分です。もちろん理想を言えば全く同じ企業が存在し、ビタッと利益率が一緒になることですが、実務上はそのようなことはあり得ません。特にTNMMを採用している場合には、その特性上、比較可能性がその他の方法(CUP法、RP法、CP法、PS法:http://futureworks-inc.jp/blog/573)よりも厳密には求められておらず、製品の多様性や機能の差異などもある程度は認められていることから、利益率レンジを用いることとなります(従前の日本においてはこのような利益率レンジの採用ではなく、平均値などの特定のポイントを用いて課税処分が行われていました)。

ただし、このような場合にあっても検討している比較対象企業の全てが必ずしも同程度の比較可能性を有していないということもあります。そのために実際の独立企業間価格の決定は、必然的に優れた判断を行うことが必要です。実務上、優れた判断が可能として最も一般的に採用されているレンジが四分位レンジです。

四分位レンジとは、比較対象企業の利益率を数値の高い順に並べ、上位25%と下位25%を取り除いた50%のレンジを指します。この四分位レンジが国際的にも多く使用されている方法であり、多くの移転価格ドキュメントがこの四分位レンジを用いて作成されています。四分位レンジにより検証対象企業の利益率との比較検討が行われ、「四分位レンジの範囲内又はそれ以上の利益率であるために所得移転は発生していない」と結論付けられるのです。※なぜ移転価格ドキュメントの結論が「所得移転は発生していない」となるのかは ⇒ http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/15808442.html

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。インドネシアのみならず各国の移転価格ドキュメントの作成も行っていますので、ご興味がある方は是非お気軽にお問合せ下さい。

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