インドネシアの移転価格税制㉔ ~とても危険な税金の取り合い~

2017 年 9 月 1 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、前回のコラムに引き続き「とても危険な税金の取り合い」について記載します。最近多くのインドネシアのローカルファイル・マスターファイルを作成していますが、多くの日系企業が抱える問題が少しずつ明らかになってきました。

今日はその中でも、「親子ローン」に係る利息の取り合い(インドネシアと日本)について書いてみようと思います。2016年末にインドネシアの移転価格税制が改正となってから、多くの会計コンサルが「インドネシア国内においてのみ問題のない移転価格ドキュメント(ローカルファイル)」を作成しています。つまり、現在インドネシアで作成されているローカルファイルの多くは、基本的にインドネシアと日本の税金の取り合いについて、インドネシア側で問題がないことをアピールするためにしか利用できずに、インドネシアと日本の両面から検証することができません。5つある独立企業間価格の算定方法のうち、特にTNMM(取引単位営業利益法)がインドネシアにおいては広く利用されていますが、この算定方法はインドネシア片側の利益率の検証であるために、日本において価格が適正であるかの検証ができるものではありません。

移転価格税制は2か国間問題なのに、移転価格ドキュメントでは片側の検証しか行わないために問題となることが多くあります。その1つの事例として、平成18年10月26日付の親子ローンの利息に関する判例(タイ子会社に係る日本の東京地裁の判例)がありましたので、こちらを基にどのようなリスクがあるかを検証してみようと思います。

【東京地裁H18.10.26】
<前提>
A社は自動車部品等の設計、製造、販売を行っている日本法人であり、平成9年(ちょうどアジア通貨危機のころ)にタイにa社を設立し、平成9年1月~翌年11月までの間に総額約1億3,000万バーツ(日本円で約4億円)の貸付けを行いました。貸付け期間は10年であり、利率は2.5%~3%/年に設定していました。また、その他の借入を行っている事実はありません。

<論点>
この10年間の貸付利率が適正か?否か?が移転価格の論点です。移転価格税制は基本的に何かと比較してその金額が正しいかを証明するのですが、利息取引において比較対象となるものは何でしょうか。

<検証>
以前のコラム(http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/2017-03-27.html)において、移転価格税制上、利息の検証は次のいずれかの方法により行うと記載していますが、どの方法に準じて行われるべきか考えてみます。

●利息の独立企業間価格の算定●
①実際の取引金利:原則的な方法
②市場金利:借手の銀行調達利率による方法
③市場金利:貸手の銀行調達利率による方法
④市場金利:国債等の運用利率による方法
※優先順位は番号順

これらのいずれかの方法によって金利の適正性を確認します。
当判例は比較対象取引が存在しない場合に、「準ずる方法(想定による比較可能性を図る方法)」が有用と認められた重要な判定です(a社が銀行等から借入を行っている事実はなく、また、当時タイにおいては銀行から長期の借入はできなかったため比較対象取引がありませんでした。)

上記の判例で用いられた方法は、②の「市場金利:借り手の銀行調達利率による方法」、具体的にはスワップレート+スプレッドでの評価です。ロンドン市場にてタイバーツを短期変動金利で調達し、スワップ取引で10年固定金利(9.5%~18.2%/年)に変更、実質的に長期固定金利で資金を調達したと同じ状況が設定されました。その結果、想定する借り手の銀行調達利率は10.5%~19.2%/年とされ、2.5%~3%/年で利息設定していたA社は日本側で多額の追徴課税とされてしまったという判例です。

この判例は、あくまでも一例ではありますが、移転価格文書の作成にあってはインドネシアのフォローだけを行い日本側のフォローがなされないことがあります。特に日本側ではローカルファイルの作成義務がなく(国外関連者との前年度棚卸取引金額が50億円未満(役務提供3億未満)の会社は日本側で作成義務がない)、ローカルファイルの作成を行わない企業においては、その傾向が顕著ですので、日本側のリスク検証もしっかりと行いましょう。

IDR(インドネシアルピア)ではスワップレートではなく国際レート(10年債)+スプレッドという形で評価を行うことも多くあります。多くの日系企業の金利設定は3%~5%/年程度で行っていますが、国際レート+スプレッドで評価した場合には、6%~8%/年ぐらいの評価になると思いますので、こちらにも乖離があるために日本側で問題にならないよう注意する必要があります。
また、「反対に」最近インドネシアにおいて実際にあった事例(税務調査)で、インドネシア国内においてIDR建ての借入では3%の利率でOKだったけれど、USD建てでの借入では3%では認められない(適正は1.5%と指摘)として、否認されてしまった事例も出てきています。まだ、この指摘がスタンダードになっているようには思いませんが、多くの日系企業の金利設定が3~5%である現状を鑑みると少し怖い気がしています。※USDのスワップレート(2%程度)+スプレッドで評価しても3%は超えると主張できる気がしますが、おそらく聞く耳などもってくれないのでしょう・・・。

この税金の取り合いは納税者からは到底納得できませんが、日本に合わせて利率設定をするとインドネシア側で指摘され、インドネシアに合わせて利率設定すると日本側で指摘されます。いずれにしても日系企業は(取引の性質を無視して、一律で対価を決定してしまう傾向にあるので)利息設定、ロイヤルティ設定、役務提供対価設定などで移転価格上の問題を多く抱えている企業が多いです。指摘リスクを洗い出して、その上で“今後”どのように契約内容を変えていくかの検討が非常に大切です。

※弊社では初回ミーティングを無料で行っております。移転価格ドキュメントの作成を検討されているお客様は積極的にご活用いただければ幸いです。

インドネシアの移転価格税制㉓ ~日本当局が公表するローカルファイルの形式&コンサルの見分け方~

2017 年 8 月 17 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、「日本当局が公表するローカルファイルの形式」についてお伝えいたします。BEPSプロジェクトの公表する行動計画13においてローカルファイルに記載すべき項目が列挙されています。各国(日本やインドネシアを含める)はこちらの行動計画13に則って国内法を改正していますので、記載すべき内容は各国において大きく異なるところではありません。そのために日本で公表されている最新のローカルファイルの内容を確認することによってインドネシアのローカルファイルの検証が可能なために、今回は「日本当局が公表するローカルファイルの形式」についてお伝えできればと思っております。※国税庁ホームページにおいて、「同時文書化対応ガイド」が公表されており、本日のコラムはそちらの資料の事例を用いたいと思います。。

【同時文書化対応ガイド】
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/kakaku_guide/pdf/takokuseki_03.pdf

まずは目次を抽出します。
【ローカルファイル目次】
1.当社及びグループの概要
2.国外関連者の概要
3.国外関連取引の詳細
(1)国外関連取引の概要
(2)各国外関連取引に係る契約関係
(3)各国外関連取引の内容と取引価格の設定について
(4)各国外関連取引に係る損益
4.国外関連取引に係る当社とA社の機能及びリスク
(1)当社について
(2)A社について
(3)無形資産の形成への貢献
5.当社及びA社の事業方針等
(1)当社の事業方針等
(2)A社の事業方針等
6.市場等に関する分析
(1)A国市場に関する分析
(2)その他の分析
7.独立企業間価格の算定方法等
(1)独立企業間価格の算定方法
(2)比較対象取引の詳細
8.A社との国外関連取引に密接に関連する取引について

【添付資料】
添付資料1 グループの資本関係図
添付資料2 当社の会社案内
添付資料3 当社の有価証券報告書【企業情報】【事業の内容】
添付資料4 当社の組織図
添付資料5 当社とA社、B社の資本関係を示す図
添付資料6 A社の組織図
添付資料7 各国外関連取引の取引図
添付資料8 当社とA社の間の契約書(「金型及び機械設備販売契約」「原材料供給契約」等)
添付資料9 A社の顧客向け商品のパンフレット
添付資料10 A社の顧客向け商品のプライスリスト
添付資料11 各国外関連取引に係る取引金額等の詳細
添付資料12 2017 年 3 月期の当社とA社の利益配分状況を示すもの
添付資料13 近年の取引価格の推移表
添付資料14 各国外関連取引に係る損益
添付資料15 当社の各国外関連取引に係る損益の作成過程(図)
添付資料16 当社の組織図に所属員数表、業務分掌表(又は規定)を追加したもの
添付資料17 国外関連取引に係る当社及びA社の機能に関する整理表
添付資料18 国外関連取引に係る当社及びA社のリスクに関する整理表
添付資料19 A社の組織図に所属員数表、業務分掌表(又は規定)を追加したもの
添付資料20 当社の有価証券報告書【企業情報】【事業の情報】【研究開発活動】
添付資料21 国外関連取引において使用している無形資産に係る整理表
添付資料22 当社の事業方針等を検討した社内会議資料、議事録
添付資料23 市場分析レポート(○出版)
添付資料24 当社の 2017 年度決算説明会資料「為替の影響」
添付資料25 検証対象損益
添付資料26 検証結果
添付資料27 差異調整関連資料
添付資料28 母集団の法人リスト
添付資料29 当選定基準を設けた理由
添付資料30 選定除外法人リスト
添付資料31 比較対象取引を行う法人の概要資料
添付資料32 国外関連取引と比較対象取引との比較可能性に関する検討資料
添付資料33 利益率の範囲の算定資料
添付資料34 B社の組織図
添付資料35 A社とB社の間の契約書「製品販売契約」
添付資料36 B社の財務諸表(単体)
添付資料37 A社から輸入した製品Xに係るB社の損益
添付資料38 B社がB国の権限ある当局から受けているA社との取引に関する独立企業間価格の算定方法についての確認通知

前回、前々回とお伝えした目次例と比較してみると、当事例ではローカルファイルそのものの分量が少なく、添付資料が多い形式を取っています。実務上において作成されているローカルファイルにおける図表関連については、本文中に差し込むことが可能なものは本文中に記載されている形式が多いです。弊社が作成するローカルファイルにおいて添付資料は10種類程度になります。

当資料を最初に確認した際に思ったことは、「今まではコンサルが積極的には表に出さなかった移転価格文書の具体的な内容が次々と公になってきている」ということでした。例えば、この同時文書を大手コンサルファームに依頼すると300万円程度の価格になるでしょう(5年ほど前は500万円ぐらいしていました)。現在は大手コンサルだけでなく中堅の会計事務所や移転価格専門の会計事務所など、対応できる会計事務所が増えています。供給量が増えたために移転価格文書作成の適正価格も比例して下がっています。ただし、価格も安くなり選択肢は増えましたが、会計業界においては「安かろう悪かろう」も一面として存在しますので、選ぶコンサルをどこにするかは難しい問題です。

対策としては、実際に業務を依頼する前にコンサルから成果物(のイメージ)を見せてもらうと良いと思います。この時に「守秘義務の関係で~うんぬんかんぬん~」と言っている価格の安いコンサル会社は絶対に選んではいけないものと個人的には思います(当社においても顧客情報を全て削除した営業用のひな型がありますので成果物のイメージは教えてもらえるはずです)。

コンサル業界は大きく2つに大別できます。
①ブルーオーシャンの時代から業務を続けているコンサル
②レッドオーシャンになった時代に業務を始めたコンサル

移転価格実務に当てはめてみると、ブルーオーシャンの時代からドキュメンテーション業務を続けているコンサルは、情報をあまり出したがりません。待っていても仕事が来るからです。このようなコンサルが出す情報は、実務的な情報というよりも法律的な情報でしょう。移転価格セミナーが法律概要の説明のように感じるのは実務的な内容が入っていないため。つまりコンサルが情報を出していないためです(法律情報は公開情報)。このコンサルが「守秘義務の関係で~うんぬんかんぬん~」という理由は分かります。供給量が少ない時から業務を行っていたために価格が高いのも納得です。

反対にレッドオーシャンになった時代に業務を始めたコンサルは、積極的に情報を出していきます。待っていたら仕事が来ないからです。このようなコンサルは法律的な情報も実務的な情報もどちらも積極的に公開します。クライアントに業務ができることを的確に説明し、少し価格を安くして対応するのです。このようなコンサルが行う移転価格セミナーが法律概要だけだと違和感を覚えますし、「守秘義務の関係で~うんぬんかんぬん~」と言っていることにも違和感を覚えます。

上記ではブルーオーシャンとレッドオーシャンという文言を用いて比較しましたが、会計業界においてはブルーオーシャン(大手監査法人系会計事務所)とレッドオーシャン(独立系会計事務所)と置き換えても良いかもしれません。時代は少しずつ移り変わりつつあり、大手監査法人系の会計事務所が今や積極的に情報を開示しています。今までは開示されていなかった実務情報も開示するようになりました。値段も少しずつ下がってきています(それでも上記300万円ですが・・・)。独立系の会計事務所では、それ以上の情報を開示し、価格をそれ以上に下げて設定しなければ、「付き合い」以外で仕事を取ることは難しいのです。

弊社では、日本側の取りまとめ(ポリシー&マスターファイル作成)を大手監査法人が行い、インドネシアのローカルファイル作成を弊社が担当するような形式でも業務を行っています。各国の整合性を担保するために大手監査法人が作成するポリシー、マスターファイル、ローカルファイルを確認することもあります(同様に独立系の会計事務所が作成する各種ファイルも確認しています)が、超情報化社会と言われる昨今では大手監査法人と独立系会計事務所の品質に大きな差はなくなってきているように感じます。ただし、日系会計事務所とローカル会計事務所には大きな差がありますのでその点はご注意ください。

さて、本来であれば上記のローカルファイルの内容についてコメントする予定でしたが、話が「コンサルの見分け方」に逸れてしまいました。移転価格ドキュメントの作成に関しては、専門的な知識を保有していることはもちろんですが、①過去の経験(移転価格業務の経験)、②理論的思考回路(価格の正当性の主張)、この2つがとても大切になります。特に日本における移転価格税制は大手監査法人系の会計事務所がその殆どを行っていましたので、会計実務経験が長い独立系会計事務所においても移転価格実務の経験は少ないということも往々にしてあり得ます。事前の面談時にしっかりと内容・スケジュールまで踏み込んで話し合うことが重要です。

長くなりましたので、上記の公表されているローカルファイルの内容についてのコメントは次回以降に書こうと思います。そのためご興味がある方は事前に国税庁が公表する「同時文書化対応ガイド」をご一読いただければと思っております。それでは次回以降のコラムもよろしくお願いします。

※弊社では初回ミーティングを無料で行っております。移転価格ドキュメントの作成を検討されているお客様は積極的にご活用いただければ幸いです。

インドネシアの移転価格税制㉒ ~今回のコラムでローカルファイルの全てが分かる~

2017 年 8 月 10 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、前回のコラムに引き続き「ローカルファイルの具体的項目(前回コラム:http://futureworks-inc.jp/blog/634)」について記載します。まずは、「ローカルファイルの目次例」について改めて確認してみましょう。

【ローカルファイル目次例】

1.はじめに

1.1本分析の⽬的

1.2本分析の制限要素と条件(Limitation and condition)

2.Executive Summary

2.1分析対象会社及び国外関連者の概要

2.2分析対象取引

2.3分析対象事業年度

2.4特性及び取引の統合

3.関連会社の概要

3.1 親会社の紹介

3.2 分析対象会社の紹介

3.3持分関係

3.4インドネシア移転価格税制の適用の有無

4.国外関連者間の取引

4.1国外関連者間の取引概要

4.2国外関連者間の取引実績

5.産業分析

5.1○○〇産業

5.2□□□産業

5.3△△△産業

6.無形資産の整理

6.1無形資産の移転状況

7.機能・リスクの分析

7.1機能分析

7.2リスク分析

8.独立企業間価格算定方法の選定

8.1概要

8.2独立企業間価格算出方法の選定基準

8.3独立企業間価格算出方法の選定

9.経済的分析

9.1○○取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

9.2□□取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

10.結論

前回のコラムにおいては、この目次の「6.無形資産の整理、7.機能・リスクの分析」を記載しました。移転価格ポリシーとの関連性なども書きましたので、参考にしてもらえればと思います。

 

今日は、「8.独立企業間価格算定方法の選定」からの項目をそれぞれ記載します。実はこの移転価格税制コラムの11回目から14回目の記事にこれらの項目の詳細を記載していますので、踏み込んで確認したい方は以下のそれぞれの記事を改めてご確認ください。

【過去ログ】

Part11(比較対象企業の選定):http://futureworks-inc.jp/blog/570

Part12(独立企業間価格算定方法の選定):http://futureworks-inc.jp/blog/573

Part13(データベーススクリーニング等):http://futureworks-inc.jp/blog/580

Part14(利益率レンジ):http://futureworks-inc.jp/blog/583

 

「8.独立企業間価格算定方法の選定」に関して、独立企業間価格の算定方法には次の5つの方法があります。

【独立企業間価格の算定方法】

(1)独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method:CUP法)

(2)原価基準法(Cost Plus Method:CP法)

(3)再販売価格基準法(Resale Price Method:RP法)

(4)利益分割法(Profit Split Method:PS法)

(5)取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:TNMM)

現在、世界的にベストメソッドルールが採用され、これらの方法の中で一番実態にあった方法を適用するとされていますが、闇雲に検討するわけではありません。上記の算定方法の番号順が理論的に客観性の高い順とされています(一番客観性が高い方法はCUP法)ので、これらの方法が適用できるかを1つずつ検討していくことになります。具体的な検討の内容は次のような形で行います。

【8.独立企業間価格算定方法の選定(CUP法の検討箇所)】

CUP法は、比較対象企業と第三者(自社内に同一の取引/製品があるか)又は国外関連者と第三者(グループ内に同一の取引/製品があるか)、第三者同士(外部に同一の取引/製品があるか)の取引において比較可能性が担保できる場合に適用される独立企業間価格算定方法となります。ただし、比較対象企業を含む多国籍企業グループ内においては、第三者との間で同種の取引/製品を同様の(又は類似した)条件で販売又は購入を行っていません。また外部の公開データ等から同種の取引/製品に関する具体的なデータ入手することは困難であり、そのためにCUP法の適用は適切でないと判断しました。

このように上記の算定方法順に一つずつ検討を行っていき、採用する方法を探していくことになります。この時に途中で採用する方法が見つかったとしても、その後の方法の検討がなくなるわけではなく、その他の方法を適用しない理由はしっかりと記載します(これはベストメソッドルールを採用している所以です)。

例えば、CUP法を採用する場合にはそれ以外の方法検討欄には、「CUP法の方がより客観性の高い独立企業間価格の算定方法であるために、CP法の適用は適切ではないと判断しました」このような記載がなされます。

また、移転価格税制においては、取引単位ごとに個別に独立企業間価格を算定するために、この独立企業間価格の算定方法の選定についても取引単位ごとにそれぞれ検討を行うことになります。

 

次に「9.経済的分析」に関しては、独立企業間価格の算定方法の選定と同様に取引単位ごとにそれぞれ行います。上記の目次を更にブレイクダウンしてタイトルだしをしてみようと思います(コラムではこれ以上内容が書けない(申し訳ありません!)ので、必要であれば個別にご連絡ください。その際はどのようなものを作るかの詳細をお伝えいたします ←インドネシアであっても、日本であっても、タイであっても作成するドキュメントの各タイトルは以下の並びが基本となります。そのためお問合せについても国を選ばずお答えいたします)。

【9.経済的分析】

9.1.1比較対象企業の選定

9.1.1.1データベース

9.1.1.2選定基準及び選定プロセス

(1)データベースからのデータ抽出

①地域・国

②上場企業

③経営の継続性

④支配関係

⑤産業分類コード

(2)定量分析

①財務データの入手可能性

②営業損失が発生している企業

③売上高研究費比率が高い企業

④著しく事業規模の異なる企業

(3)定性分析

①著しく異なる商品

②異なる機能を有している企業

③特定の企業との取引に大きく依存している企業

④事業の継続性に疑義が生じている企業

(4)比較対象企業の選定結果

9.1.2独立企業間利益率レンジの算定

9.1.2.1複数年度のデータ使用の有無

9.1.2.2統計的手法

9.1.3算定及び検証結果

 

最後に結論ですが、ローカルファイルによっては取引単位ごとに検証結果をそれぞれ個別に記載し、それをもって結論としているパターンも散見されますが、当社では上記の「経済的分析による検証結果:9.1.3算定及び検証結果」と結論は分けて記載しています。具体的な結論の内容は次のような形になります。

【10.結論】

2016事業年度における分析対象会社の各種取引においては、現時点で取得しうる財務データを基に検証した結果、分析対象会社と国外関連者において所得移転は認められず、関連する国外関連取引についてはPMK213及び関連する移転価格諸法令に準拠していると結論付けられます。

 

さて、いかがでしたでしょうか。前回と併せて確認すればローカルファイルがどのような立付になっているかは確認することができたかと思います。

ただし、移転価格文書の作成において難しいのは、移転価格諸法令を基に各企業が価格を決めているのではなく、各企業が決めた取引価格を移転価格諸法令の枠組みの中にある種“強引”に当てはめることにあります。すべての会社がすべての国外取引を同様の価格で行っているわけはありませんし、各国でかかる原価やコストにおいても大きな違いが現れます。内部コンパラブル(上記の、「国外関連者と第三者(グループ内に同一の取引/製品があるか)の取引において比較可能性が担保できる」という部分)がある場合においても利益率が同一なことはあまり多くはありません。※利益率は比較対象取引の複数年の加重平均利益率を用いて比較することが一般的

そのために何故利益率が大きく異なるのかの“言い訳”を考えなくてはならないのですが、この言い訳に正当性を持たせることが難しくここがノウハウになります。例えば、「販売先が仕入価格を知り得るために薄利で販売している」や「主要原材料を現地で調達することができずに輸入しているために利益率を圧迫している」など、企業ごとにしっかりと反証可能な理由を考えなければなりません。企業によっては自信を持って価格が異なる理由やロイヤルティを支払っている理由を伝えてくれるのですが、将来的に指摘リスクのある理由も多く、リスクがある旨をしっかりと伝え今後の取引フローを再検討するなども我々の仕事になります。

当社では多国籍企業グループの将来課税リスクを全体でどれだけ下げられるかが移転価格のドキュメンテーションを行う上では最も大切なことであると考えていますので、必ず日本親会社とのミーティング及び日本語でのドキュメンテーションの作成を行っているのです。※そのため日本本社と分析対象会社との取引だけではなく、その他各国との取引などサプライチェーンについては詳細に確認しています。

どのようなところにリスクがあるのかをしっかりと把握していただいた上で、移転価格のドキュメンテーションの作成に移ってもらえれば幸いです。※初回のヒアリングは無料で対応させていただいています。

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