インドネシアの移転価格税制㉙ ~CbCRの実務~

2017 年 10 月 27 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。12月決算の会社においては、もう少しするとCbCRの初回提出の時期に差し掛かるものと思います。最近は、このCbCRの作成に関する質問が増えてきましたので、こちらの移転価格コラムでも内容をお伝えできればと思います。※先日お送りしたニュースレターと内容が重複する部分があると思いますが、ご了承ください。

【クライアントからの質問内容】
お客様:「先日、現地のコンサルからCbCRをマスターファイルに含めて欲しいと依頼がありました」
私:「法律上、マスターファイルとローカルファイルは保存義務。CbCRは提出義務のために、(CbCRの内容は)マスターファイルに含める項目ではありません」
お客様:「税務当局からの指示があったのかもしれません?」
私:「税務当局からのマスターファイルに含めるという指示は考えられません。税務当局が公表しているフォームがあるので、弊社ではそれを2017年度の申告書に添付して申告を行います(内容は2016年度のもの)。なので現地のコンサルからの独自の指示でしょう。」

・・・・と、いきなりローカルのコンサルファームから言われても困ってしまいますよね?なので、CbCRがどのようなものかを確認し、しっかりと対応できるようにしておく必要があります。具体的な対応は下記の通りです。

【具体的対応】
移転価格文書に関しては、マスターファイルとローカルファイルを作成して安心されている方も多いかと思いますが、2017年の申告書の提出と同時にCbCRも提出しなければなりません。コンサルに申告書の作成を任していたらCbCRを作成してくれなかったなどという事態も起こり得ますので、事前にコンサルにどう対応するかの確認をしていただければと思います。
※申告書の添付書類ですが、通常の申告書とは違うものを新たに作成(親会社からのヒアリング等あり)するために、業務として分けるコンサルが殆どです。

<CbCR対応のポイント>
①税務当局からフォームが公表されている※1
②グループ会社を納税地毎に分類し、定量的な情報(及び機能リスク)を記載する
③2018年からオンライン申告によって提出できる(と言われている)
④ハードコピーでの申告ももちろん可能
⑤保存義務でなく、提出義務のために確定申告書に添付して提出しなければならない
⑥2017年度に申告するCbCRの内容は2016年度の内容である
⑦ローカルファイルで行った機能分析と齟齬がないように記載する
⑧すべての日系企業はCbCRを提出しなければなりません(PMK213より)
※1公表されているフォームを下記に差し込みますので、参考にしてください。

※CbCRは上記のように4枚綴りとなっています。

具体的な取り扱いはそこまで難しいものではありません。まずは、税務当局から公表されているフォームを手に入れて、内容を確認してみてください。その上で、担当するコンサルファームに作成予定を確認し、不備なく申告を行っていただければと思います※ただし、親会社とのコミュニケーションが必要になる項目:「他国の関係会社の情報」がありますので、情報のやり取りは日本語で行えるコンサルが良いです。

インドネシアの移転価格税制㉘ ~コンサルの見極め方~

2017 年 10 月 6 日
皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。先日、「論文を読もう!(第4次産業における論文を読むことの重要性)」というタイトルの記事を書きました。その中で、次のような文章を記載しています。
【論文を読もう!<移転価格部分>】

例えば、私が現在実務で行っている“移転価格文書の作成”を例に出してお伝えすると、コンサルを入れる判断基準が「コンサルが“作成できる”と言っている」以外に持てなくなるのです。そうするとコンサルの取る手段は「SEO対策」「メディア露出」「値下げ」などになり、一番大切な技術力の向上を本気で行うところがなくなっていくのです。少なくとも自社の経理担当者・海外事業担当は「スペシャリストたれ!」なのでコンサルの「能力」を見抜く目を養うことは必要です(一部抜粋)。

これからの社会は「多様性」による「個人向生産(個別生産)」が求められる時代へと移行するために、知識の種類が加速度的に増加していきます(一般常識の範疇で考えられたいた知識がなくなっていき、より個人的なより高度な知識が台頭していきます)。移転価格税制も一般的な白か黒かを判断するものではなく、自社に則って考えたときに「白か黒」、もっと言ってしまうと「白の割合が多いか、黒の割合が多いか」というものかと思います。

画一的なものではないので、どうしても専門的かつ抽象的なものとなります。そうすると「法律で必要とされており、コンサルが作成できると言っている」が作成するか否かの判断基準となってしまっています。追徴税額が数千万円にも上る可能性のある移転価格税制の文書作成に、自社の判断が介入できない現状は非常に怖いものと感じます。

ではインドネシアへの赴任者がどこまで「移転価格の内容に精通」するべきなのでしょうか。

私の考えは、「(赴任者は)移転価格税制自体に精通する必要はありませんが、現地の状況、他社の動向など関連情報はフックしておく必要がある」です。インドネシアへの赴任者は「(製造)技術」のプロフェッショナルであり、経理のプロではありません。これからの時代、会社はゼネラリストを雇うことをやめ、その部分をシステムに置き換え、スペシャリストの集まりになっていくことでしょう。スペシャリストにならなければならない人材、本来であれば「インドネシアの移転価格の内容に精通」するべきなのはローカルの経理責任者です。

・・・が、ローカルの経理責任者のレベルが1だとすると、日本本社の経理責任者(又は国際事業部、経営企画などの責任者、以下「経理責任者等」)のレベルは10ぐらいあります。つまり結果的に「日本親会社の経理責任者等」が移転価格の内容に精通せざるを得ない状況にあるのです。インドネシアにおいて移転価格が一般化されるためには後5年ほどはかかると思いますが、その間は日本のスペシャリストが機能を代替するしかありません。もちろんインドネシアの赴任者(責任者)はインドネシアのスペシャリストなので、日本親会社からインドネシアで作成している企業割合などの現地の状況を聞かれて答えられないのはいけません。

その上で、日本のスペシャリストである経理責任者等がどこまで把握するかですが、「①移転価格に関するコンサルのレベルを把握する」「②作成業務フィーが適正価格で行われているかを把握する」「③自社の将来課税リスクに対してどこまで具体的な対策を示してくれるかを把握する(文書を作りっぱなしではない)」「④自社の過去課税リスクに対してどこまで隠してくれるか(見えづらくしてくれるか)を把握する」、確認すべき事項はこの4つであるために、コンサルに質問しながらこれらのことを把握できる知識は必要です。

ただし、コンサルとの知識レベルの差はいかんせん簡単には埋まりませんので、個別知識で勝負するのではなく、体系的な理解で会話をしていく必要があります。皆さんは移転価格の全体像及びインドネシアにおいてポイントとなる部分(指摘されやすい項目やインドネシア特有の項目)を知識として持っておき、その部分をコンサルに質問して、具体的な説明をしてもらうべきなのです。

そしてその上でインドネシアの「税務当局(税務調査担当官)の性格や権限」を踏まえて、今後どうするかの話を詰めていくのです。今の時代、「知識の価値」は青天井で下がってきていますが、「知恵の価値」は極端には下がりません。時代背景を理解していると、知識を喋ることを躊躇するコンサルは実は「知識がない」コンサルであることが多いと分かるのです。

対応すべきコンサルを選ぶポイントは上述の通り4つあり、いずれも大切です。
【重要ポイント】
①移転価格に関するコンサルのレベルを把握する
②作成業務フィーが適正価格で行われているかを把握する
③自社の将来課税リスクに対してどこまで具体的な対策を示してくれるかを把握する(文書を作りっぱなしではない)
④自社の過去課税リスクに対してどこまで隠してくれるか(見えづらくしてくれるか)を把握する
移転価格文書は作成しても過去の課税リスクが消えることはありません(作成することによってむやみに指摘されることはなくなりますが)。そのために、これをもって今後どのように指摘リスクを減らしていくかなど将来の話ができるコンサルを見つける必要があります。「円建親子ローンはダメ、ルピア建親子ローンへ借換して下さい※どちらにしろ運用はルピアで行っているので、円建てにはせずに支払利息の指摘を受ける芽を摘んでおく(契約を円建てにしているだけでリスクなら、ルピア建ての契約に巻き直す)」などの具体的な話が、移転価格文書を叩き台としてできればベストです。

インドネシアの移転価格税制㉗ ~利用可能な情報とは?~

2017 年 9 月 28 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。インドネシアの移転価格税制(PMK213)には、第3条の1項に次のような文言が含まれています。

【原文】
Dokumen Penentuan Harga Transfer sebagaimana dimaksud dalam Pasal 2 ayat (1) huruf a dan huruf b, wajib diselenggarakan berdasarkan data dan informasi yang tersedia pada saat dilakukan Transaksi Afiliasi.

【内容】
マスターファイル(2条1項aの書類)及びローカルファイル(2条1項bの書類)については、その時点での利用可能な情報を使用して作成されていればよい

今回のコラムはこの「その時点での利用可能な情報を使用」という文言の範囲について検討してみたいと思います。たまにインドネシアのお客さんから聞くのが「その時点で社内資料が用意できていないのであれば、この条項(3条1項)から今ある(社内に現存する)資料だけを保存してください、と言われています」という文言です。これはどうでしょうか?

もちろんダメです!

ここに言う「その時点での利用可能な情報を使用」というのは情報(証憑)がないことを認める条文ではありません。入手努力に対するコメントでもありません(入手努力はしたが入手できなかったなど)。これは、例えば、マスターファイルの作成において親会社との決算日のずれ(インドネシア子会社12月、日本親会社3月)によって、親会社の財務データが保存期限まで(決算日から4か月、つまり4月末)に現実的に入手できず、昨年のデータで代用するような場合以外には認められません。
※このような状態を危惧して、その他各国ではマスターファイルの保存期限が決算日から1年など長期間の国が多いのです。

例えば、税務調査の際に「書類が用意できなかった(3条の1項に則って現存する書類によって作成している)」という言い訳は、現実的に不可能である場合以外には推計課税(税務当局が利益を勝手に決めて課税してくる)の対象となる可能性が濃厚であるために注意してください。

これは既に日本やその他諸国において判例が出ているものですので、例えPMK213に「マスターファイル(2条1項aの書類)及びローカルファイル(2条1項bの書類)については、その時点での利用可能な情報を使用して作成されていればよい」とあったとしても、拡大解釈をしないようにしてもらえればと思います。

【お知らせ】

日頃お世話になっているインドネシアの皆様向けに今月からニュースレターを始めました。現在は名刺交換等をさせていただいた方を中心にお送りしておりますが、下記のブログにてお送りしたニュースレターの内容を記載しております。もし、ご興味がございましたら、こちらのブログも是非チェックしていただければ幸いです。

5分で分かるインドネシアビジネス。

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