インドネシアの移転価格税制⑬ ~データベーススクリーニング等~

2017 年 6 月 2 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今日は比較対象企業の選定のプロセスについてお伝えいたします。比較対象企業の選定は次の各ステップより成っています。

【比較対象企業の選定プロセス】

①データベーススクリーニング

②定量分析

③定性分析

④比較対象企業の選定

まず、①のデータベーススクリーニングですが、移転価格税制のスクリーニングで世界的に使われているデータベースはビューロ・ヴァン・ダイク社のOrianaやトムソン・ロイター社のONESOURCEなどがあげられます。これらのデータベースに条件(国、産業分類コード、上場の有無など)を入力し、比較対象企業の母集団をまずはピックアップするのです。未上場企業を入れて母集団を抽出するとそれなりの数にはなりますが、次の定量分析によりはじかれることも多くなりますので、上場企業のみで抽出することも多いです。

次の定量分析ですが、こちらもデータベースに条件(財務データの取得可能性、営業損失、研究開発費比率、事業規模など)を設定します。先ほど、未上場企業を入れて母集団を抽出しても定量分析ではじかれると記載したのは、未上場企業は財務データの取得が困難であるためです。また、事業規模の調整などで母集団の数はある程度調節できます。

次の定性分析ですが、こちらはデータベースに諸条件を入力する訳ではありません。定量分析後の母集団が本当に自社の比較対象企業として適正かを定性的に判断します。例えば、企業ホームページやアニュアルレポートによる機能・リスク・製品の類似性の比較等によって比較対象企業にそぐわないものは外します。ただし、データベースに入力されている企業は基本的に上場企業(絶対数が圧倒的に少ない)のため、スクリーニングの条件を厳密にすればするほど、比較対象企業の数は少なくなってしまいます(若しくはなくなってしまいます)。どこまで含めるか、どこまで外すか、移転価格税制の文書化で判断が一番入る部分かと思います。

各国の論文等でも比較対象取引の比較可能性については、多く取り上げられている所であり、その恣意性には疑問も投げかけられています。そもそも移転価格税制の考え方(各国の規定)は発達してきていますが、実務対応が追い付いておらず(インフラがあまり整備されていない状態)、インドネシアにおいても現状の最も合理的と考えられる方法により行う以外にはありません。特にインドネシアのような発展途上国はデータベースからの母集団の抽出数も先進国より圧倒的に少ないので、ある程度の”幅”はどうしても発生してしまいます。

比較対象企業の抽出が完了したら、母集団の数、抽出経緯、抽出企業の詳細(利益率)、等を記載し、独立企業レンジを算出します。独立企業レンジの算出もフルレンジ法や四分位レンジ法などいくつか方法がありますが、それはまた改めて書こうと思います。今回はデータベースからのスクリーニングについて記載しましたが、インドネシアでの本当の闘いは母集団の数との闘いかもしれません。少ない母集団でもっとも理論的な方法を選んでいただければと思います。

インドネシアの移転価格税制⑫ ~独立企業間価格算定方法の選定~

2017 年 5 月 25 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。第7回のコラムにて”移転価格の価格算定方法”について記載いたしました(参照:http://futureworks-inc.jp/blog/545)。今回のコラムではこの移転価格の価格算定方法である独立企業間価格の選定について記載します。

インドネシアにおいてもその他各国と同様に独立企業間価格の選定においては”ベストメソッドルール”が採用されています。このベストメソッドルールとは、先日のコラムでお伝えした5つの方法(独立価格比準法=CUP法、原価基準法=CP法、再販売価格基準法=RP法、取引単位営業利益法=TNMM、利益分割法=PS法)の中で、もっとも実態に沿った方法によって独立企業間価格を算出するというものであり、次のような考察を行った上で価格算定方法を選定します。

※ベストメソッドルールのポイントは、1つの方法を選定するのではなく、その他の方法が適用できない理由もしっかりと記載することです。

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<価格算定方法選定における考察>

【CUP法】

CUP法は、内部CUP法(対象企業と第三者の取引、国外関連者と第三者の取引)と外部CUP法(第三者同士の取引)に分類することができ、これらに比較対象取引が確認できる場合に適用することができる独立企業間価格の算定方法です。

対象企業及び国外関連者は、第三者との間で対象資産と同様の棚卸資産を、同様の条件において販売又は購入を行っていません。また、第三者同士の取引を公開データ等から入手することができませんでしたので、CUP法の適用は適切ではないと判断しました。

【CP法】

CP法は、国外関連取引の売手の製造コストに適切な利益を加えることで独立企業間価格を算定します。一般的に製造業の取引価格を評価するために使用されます。

対象企業及び国外関連者は、第三者との間で対象資産と類似した棚卸資産を、類似した条件において販売を行っていません。また、第三者同士の取引を公開データ等から入手することができませんでしたので、CP法の適用は適切でないと判断しました。

【RP法】

RP法は、国外関連取引の買手の再販売価格から適切な利益を差引くことで独立企業間価格を算定します。一般的に卸売業の取引価格を評価するために使用されます。

対象企業及び国外関連者は、第三者との間で対象資産と類似した棚卸資産を、類似した条件において購入を行っていません。また、第三者同士の取引を公開データ等から入手することができませんでしたので、RP法の適用は適切でないと判断しました。

【TNMM】

TNMMは、国外関連取引に係る営業利益により独立企業間価格を算定します。

この方法においては、他の独立企業間価格の算出方法と違い高度な比較可能性を要求されてはおらず、棚卸資産や契約条件の差異による利益率の変動が比較的少ないという利点により、TNMMの適用が適切であると判断しました。

【PS法】

PS法は、対象企業及び国外関連者の双方が無形資産を保有する場合などに使用されます。

対象企業及び国外関連者は、無形資産を保有していないためにPS法の適用は適切でないと判断しました。

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これらの方法は、優先順位順に並べています(PS法は別)。そのために例えばCUP法の適用が適切と判断された場合には、「独立企業間価格の算出方法の選定においてCUP法が最も直接的な方法であります。棚卸資産取引に関してはCUPの適用が適切と判断されていますので、その他の方法は適切でないと判断しました。」というような文言を記載します。

価格の算出方法を選定した後は、いよいよ経済分析に入ります。データベース(ビューロバンダイク、ワンソースなど)を利用して比較対象企業のピックアップを行い、当社のビジネスはしっかりと独立企業間価格で行われているかを確認するのです。

※ちなみに別で書いているブログに「独立企業間価格と時価の違い」を記載していますので、ご興味があればこちら(http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/15808442.html)もご確認ください。

いかがでしたでしょうか。少しずつコラムの内容も実務的な内容になってきていますので、ローカルファイルを作成する際の参考にしてもらえれば幸いです。また、6月15日(木)にインドネシアにおいて”第2回目の移転価格セミナー”を行おうと考えています。改めて内容等は公表いたしますが、実務でどのようなものを作っているのかを可能な限りで皆様にお見せしようと思っています。こちらについても併せてよろしくお願いいたします。

インドネシアの移転価格税制⑪ ~比較対象企業の選定~

2017 年 5 月 19 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回のテーマは移転価格文書化において重要な「比較対象企業の選定」についてです。移転価格税制では第三者と自社の価格を比較して自社の価格が正当なものであることを主張するために、この「比較対象企業の選定」はとても大切なものです。比較対象企業は第三者を指すものですので、換言すれば「第三者の選定」です。この第三者の選定は、上場企業のような公表資料がある会社の場合には当該公表資料から、公表資料がない会社については企業データベースから、「比較対象企業の選定」を行います。※主にはビューロバンダイクやワンソースなどの企業データベースから抽出します。⇒その後にホームページなどで確認したりします。

この際に母集団をピックアップするのですが、その際に製造業であれば「◎◎◎◎の製造業」などと条件を絞って抽出します。(「自動車部品の製造業」などでは範囲が広すぎるために、少しずつ詳細な条件を入れていくことでしょう。)

大きな条件で囲った母集団は数万社、ドキュメントに記載する母集団は300~500ぐらいになるかと思いますが、その全てが利用できるものではありません。比較対象となり得る企業は10~20ぐらいであり、母集団から更に比較可能性を高めるために除外基準を設定して比較対象企業の精度を上げていくのです。

【除外基準(例)】

■監査報告書にて適正意見が出されていない会社

■売上高の規模に大きな差がある会社

■関連会社間取引の割合に大きな差がある会社

■営業損失が発生している会社(TNMMの場合)

■事業活動に大きな差がある会社

■取扱製品に大きな差がある会社

 

このような会社を適宜除外していき、比較対象企業を絞っていくのです。

レポートには、「3万社の類似業種を分析した結果、比較対象企業として選定された会社は20社です。」というような文言を入れて、その後にその20社と利益率の比較をするのです。その際に差異の調整を行った後の営業利益率で比較を行っていくのですが、この差異調整は説明が難しいので割愛します。

このように比較対象企業の抽出ひとつをとっても、その抽出の判断を誤ってしまうと利益率に大きなかい離が出ることも考えられます。特に同様の製品にみえても材料に違いがあるような場合など、取引の分析(製品の分析)などが甘ければ実態とかけ離れた分析をしてしまうこともあるために注意してもらえればと思います。

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