インドネシアの移転価格税制㉒ ~今回のコラムでローカルファイルの全てが分かる~

2017 年 8 月 10 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、前回のコラムに引き続き「ローカルファイルの具体的項目(前回コラム:http://futureworks-inc.jp/blog/634)」について記載します。まずは、「ローカルファイルの目次例」について改めて確認してみましょう。

【ローカルファイル目次例】

1.はじめに

1.1本分析の⽬的

1.2本分析の制限要素と条件(Limitation and condition)

2.Executive Summary

2.1分析対象会社及び国外関連者の概要

2.2分析対象取引

2.3分析対象事業年度

2.4特性及び取引の統合

3.関連会社の概要

3.1 親会社の紹介

3.2 分析対象会社の紹介

3.3持分関係

3.4インドネシア移転価格税制の適用の有無

4.国外関連者間の取引

4.1国外関連者間の取引概要

4.2国外関連者間の取引実績

5.産業分析

5.1○○〇産業

5.2□□□産業

5.3△△△産業

6.無形資産の整理

6.1無形資産の移転状況

7.機能・リスクの分析

7.1機能分析

7.2リスク分析

8.独立企業間価格算定方法の選定

8.1概要

8.2独立企業間価格算出方法の選定基準

8.3独立企業間価格算出方法の選定

9.経済的分析

9.1○○取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

9.2□□取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

10.結論

前回のコラムにおいては、この目次の「6.無形資産の整理、7.機能・リスクの分析」を記載しました。移転価格ポリシーとの関連性なども書きましたので、参考にしてもらえればと思います。

 

今日は、「8.独立企業間価格算定方法の選定」からの項目をそれぞれ記載します。実はこの移転価格税制コラムの11回目から14回目の記事にこれらの項目の詳細を記載していますので、踏み込んで確認したい方は以下のそれぞれの記事を改めてご確認ください。

【過去ログ】

Part11(比較対象企業の選定):http://futureworks-inc.jp/blog/570

Part12(独立企業間価格算定方法の選定):http://futureworks-inc.jp/blog/573

Part13(データベーススクリーニング等):http://futureworks-inc.jp/blog/580

Part14(利益率レンジ):http://futureworks-inc.jp/blog/583

 

「8.独立企業間価格算定方法の選定」に関して、独立企業間価格の算定方法には次の5つの方法があります。

【独立企業間価格の算定方法】

(1)独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method:CUP法)

(2)原価基準法(Cost Plus Method:CP法)

(3)再販売価格基準法(Resale Price Method:RP法)

(4)利益分割法(Profit Split Method:PS法)

(5)取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:TNMM)

現在、世界的にベストメソッドルールが採用され、これらの方法の中で一番実態にあった方法を適用するとされていますが、闇雲に検討するわけではありません。上記の算定方法の番号順が理論的に客観性の高い順とされています(一番客観性が高い方法はCUP法)ので、これらの方法が適用できるかを1つずつ検討していくことになります。具体的な検討の内容は次のような形で行います。

【8.独立企業間価格算定方法の選定(CUP法の検討箇所)】

CUP法は、比較対象企業と第三者(自社内に同一の取引/製品があるか)又は国外関連者と第三者(グループ内に同一の取引/製品があるか)、第三者同士(外部に同一の取引/製品があるか)の取引において比較可能性が担保できる場合に適用される独立企業間価格算定方法となります。ただし、比較対象企業を含む多国籍企業グループ内においては、第三者との間で同種の取引/製品を同様の(又は類似した)条件で販売又は購入を行っていません。また外部の公開データ等から同種の取引/製品に関する具体的なデータ入手することは困難であり、そのためにCUP法の適用は適切でないと判断しました。

このように上記の算定方法順に一つずつ検討を行っていき、採用する方法を探していくことになります。この時に途中で採用する方法が見つかったとしても、その後の方法の検討がなくなるわけではなく、その他の方法を適用しない理由はしっかりと記載します(これはベストメソッドルールを採用している所以です)。

例えば、CUP法を採用する場合にはそれ以外の方法検討欄には、「CUP法の方がより客観性の高い独立企業間価格の算定方法であるために、CP法の適用は適切ではないと判断しました」このような記載がなされます。

また、移転価格税制においては、取引単位ごとに個別に独立企業間価格を算定するために、この独立企業間価格の算定方法の選定についても取引単位ごとにそれぞれ検討を行うことになります。

 

次に「9.経済的分析」に関しては、独立企業間価格の算定方法の選定と同様に取引単位ごとにそれぞれ行います。上記の目次を更にブレイクダウンしてタイトルだしをしてみようと思います(コラムではこれ以上内容が書けない(申し訳ありません!)ので、必要であれば個別にご連絡ください。その際はどのようなものを作るかの詳細をお伝えいたします ←インドネシアであっても、日本であっても、タイであっても作成するドキュメントの各タイトルは以下の並びが基本となります。そのためお問合せについても国を選ばずお答えいたします)。

【9.経済的分析】

9.1.1比較対象企業の選定

9.1.1.1データベース

9.1.1.2選定基準及び選定プロセス

(1)データベースからのデータ抽出

①地域・国

②上場企業

③経営の継続性

④支配関係

⑤産業分類コード

(2)定量分析

①財務データの入手可能性

②営業損失が発生している企業

③売上高研究費比率が高い企業

④著しく事業規模の異なる企業

(3)定性分析

①著しく異なる商品

②異なる機能を有している企業

③特定の企業との取引に大きく依存している企業

④事業の継続性に疑義が生じている企業

(4)比較対象企業の選定結果

9.1.2独立企業間利益率レンジの算定

9.1.2.1複数年度のデータ使用の有無

9.1.2.2統計的手法

9.1.3算定及び検証結果

 

最後に結論ですが、ローカルファイルによっては取引単位ごとに検証結果をそれぞれ個別に記載し、それをもって結論としているパターンも散見されますが、当社では上記の「経済的分析による検証結果:9.1.3算定及び検証結果」と結論は分けて記載しています。具体的な結論の内容は次のような形になります。

【10.結論】

2016事業年度における分析対象会社の各種取引においては、現時点で取得しうる財務データを基に検証した結果、分析対象会社と国外関連者において所得移転は認められず、関連する国外関連取引についてはPMK213及び関連する移転価格諸法令に準拠していると結論付けられます。

 

さて、いかがでしたでしょうか。前回と併せて確認すればローカルファイルがどのような立付になっているかは確認することができたかと思います。

ただし、移転価格文書の作成において難しいのは、移転価格諸法令を基に各企業が価格を決めているのではなく、各企業が決めた取引価格を移転価格諸法令の枠組みの中にある種“強引”に当てはめることにあります。すべての会社がすべての国外取引を同様の価格で行っているわけはありませんし、各国でかかる原価やコストにおいても大きな違いが現れます。内部コンパラブル(上記の、「国外関連者と第三者(グループ内に同一の取引/製品があるか)の取引において比較可能性が担保できる」という部分)がある場合においても利益率が同一なことはあまり多くはありません。※利益率は比較対象取引の複数年の加重平均利益率を用いて比較することが一般的

そのために何故利益率が大きく異なるのかの“言い訳”を考えなくてはならないのですが、この言い訳に正当性を持たせることが難しくここがノウハウになります。例えば、「販売先が仕入価格を知り得るために薄利で販売している」や「主要原材料を現地で調達することができずに輸入しているために利益率を圧迫している」など、企業ごとにしっかりと反証可能な理由を考えなければなりません。企業によっては自信を持って価格が異なる理由やロイヤルティを支払っている理由を伝えてくれるのですが、将来的に指摘リスクのある理由も多く、リスクがある旨をしっかりと伝え今後の取引フローを再検討するなども我々の仕事になります。

当社では多国籍企業グループの将来課税リスクを全体でどれだけ下げられるかが移転価格のドキュメンテーションを行う上では最も大切なことであると考えていますので、必ず日本親会社とのミーティング及び日本語でのドキュメンテーションの作成を行っているのです。※そのため日本本社と分析対象会社との取引だけではなく、その他各国との取引などサプライチェーンについては詳細に確認しています。

どのようなところにリスクがあるのかをしっかりと把握していただいた上で、移転価格のドキュメンテーションの作成に移ってもらえれば幸いです。※初回のヒアリングは無料で対応させていただいています。

インドネシアの移転価格税制㉑ ~ローカルファイルの具体的項目~

2017 年 8 月 3 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、「ローカルファイルの具体的項目」について記載します。本当のことを言うと、、、ローカルファイルの具体的な項目は伏せておこうかと思っていたのですが、先日お客さんからマスターファイルの具体的項目(http://futureworks-inc.jp/blog/625)を書いたなら、ローカルファイルの具体的項目についても書いて欲しいとお願いされてしまいました・汗。当コラムを見て参考にして下さる方がいることが、毎週の文章を書く動力源となりますので、可能な限り記載します。参考にしてもらえれば幸いです。

さて、マスターファイルの具体的項目でも目次例を記載しましたが、全体像を確認するためにはローカルファイルにおいても「目次例」を書かないわけにはいきません。

【ローカルファイル目次例】

1.はじめに

1.1本分析の⽬的

1.2本分析の制限要素と条件(Limitation and condition)

2.Executive Summary

2.1分析対象会社及び国外関連者の概要

2.2分析対象取引

2.3分析対象事業年度

2.4特性及び取引の統合

3.関連会社の概要

3.1 親会社の紹介

3.2 分析対象会社の紹介

3.3持分関係

3.4インドネシア移転価格税制の適用の有無

4.国外関連者間の取引

4.1国外関連者間の取引概要

4.2国外関連者間の取引実績

5.産業分析

5.1○○〇産業

5.2□□□産業

5.3△△△産業

6.無形資産の整理

6.1無形資産の移転状況

7.機能・リスクの分析

7.1機能分析

7.2リスク分析

8.独立企業間価格算定方法の選定

8.1概要

8.2独立企業間価格算出方法の選定基準

8.3独立企業間価格算出方法の選定

9.経済的分析

9.1○○取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

9.2□□取引に係る独立企業間価格の算定及び検証結果

10.結論

 

この目次例を基にしてローカルファイルを作成し、足りない情報は添付資料(例えば:データベースからの比較対象企業の抽出マトリックスや比較対象企業の母集団一覧、比較対象企業の事業概要一覧など)にて補完していく形式をとることになります。

 

目次は大項目の1~10にて構成されており、会社によって少し内容を修正しながら作っていきます。その中の1~5についてはレポートの前提条件や概況情報の記載となり、6~10についてがローカルファイルのコア(適正性の評価)部分になります。この部分の詳細を、下記に記載していきます。

【機能・リスク・資産分析について:項目6&7】

先日のマスターファイルの具体的項目(http://futureworks-inc.jp/blog/625)において次のように記載しています。

<マスターファイルにおける機能・リスク・資産分析の一覧表個所の抽出>

ⅵ 機能・リスク・資産分析の概要

AAAグループの構成会社が遂行する機能、負担するリスク、使用する無形資産は、次の図表の通りです。

⇒図表の挿入(機能・リスク・資産の各項目、究極の親会社の所在国、製造機能の構成会社、販売機能の構成会社)※機能、リスク、無形資産は縦の項目として分類することが通常。横軸の構成会社は基本的に機能で分類する。◎〇△×などの評価基準を設けて、それぞれのエンティティがどのような役割を担っているか一覧できる表を作成する。

マスターファイルにおける機能・リスク・資産分析の概要は、基本的に各ローカルファイルから抽出したこれらの情報の一覧表になります。例えば、貴社がインドネシア、タイ、中国、メキシコに子会社があったとすれば、その各子会社が持っている機能・リスク・資産の状況をローカルファイルにて詳細に記載し、その結果をマスターファイルにまとめるような立付となります。そのためにマスターファイルの内容と齟齬がないように各国の機能・リスク・資産分析をしなければなりません。

 

なお、ローカルファイルの機能・リスクの内容については、「http://futureworks-inc.jp/blog/559」こちらをご確認ください。このURLにより機能・リスクの内容を確認していただくと、機能の1つに研究開発機能があるかと思います。そちらを例に取り、更にイメージを固めてみると、、、

<ローカルファイルにおける機能分析箇所の抽出>

7.1.1 研究開発活動機能(例)

研究開発活動は日本親会社が行っており、分析対象会社で行っている研究開発活動はありません。研究開発活動の成果に関する特許権、ノウハウなどは全て日本親会社が保有しています。

研究開発活動機能は子会社では遂行しておらず、親会社によって遂行されていると分かります。研究開発活動の結果として得られる無形資産についても、もちろん親会社が保有しているために、子会社はその無形資産(ノウハウ等を含む)を利用してインドネシアにおいて製造を行っています。この部分がロイヤルティの支払い(利益配分)などの根拠となるのです。簡単に言うと、リスクを負担して投資のレバレッジをかければそれだけリターンが大きくなるように、移転価格税制においても機能やリスク、無形資産を負担するだけ利益も多く得られると考えるのです。

 

もっと突っ込んで解説すると、そもそも機能・リスク・資産分析は移転価格ポリシーの作成(http://futureworks-inc.jp/blog/610)の段階で把握しなければなりません。こちらのURLの中において、移転価格ポリシー①(簡易版)と移転価格ポリシー②に分類していると思いますが、ポリシー②の重要な部分を抜き出してみると、、、

<移転価格ポリシーの価格設定根拠部分の抽出>

役務提供取引(類型Ⅱ-ⅱ)にて適用する移転価格算定方法:TNMM(取引単位営業利益法)

【価格設定方法の内容】

・役務提供者が使用する利益水準は総費用営業利益率とする。

・役務提供者はシステム開発会社として限定的な機能、リスクを有している。

・役務受益者は当システム開発に関する無形資産を保有している。

・当国外関連取引における超過収益及び損失は役務受益者が負担する。

・役務受益者は両者(役務受益者及び役務提供者)が保有する機能、リスク、資産に応じ、適切な業務委託料を設定する。

移転価格の検証方法:総費用営業利益率が、ローカルファイルの独立企業間利益率レンジに収まる場合には、当取引価格はPMK213及びその他移転価格関連法令に基づき設定されていると判断できる。

どうですか?機能・リスク・無形資産という言葉がふんだんに使われていることが分かるかと思います。つまりポリシーを作り込む場合には、その作成段階で機能・リスク・無形資産の分析が行われ、ローカルファイルやマスターファイルに記載される内容は、その結果を記載することになるのです(ポリシーの中に、TNMMと独立企業間価格算定方法を記載する場合には、必ず機能・リスク・資産の把握は行われるのです)。

 

ちなみに移転価格ポリシー①(簡易版)は次の通りのために、簡易版のポリシーでは機能・リスク・資産分析は行われません。

<簡易版移転価格ポリシーの抽出>

役務内容:役務提供者は、役務受益者が販売活動及び一般管理活動を適正に行うための各種サポート及び必要な知識を得るための役務受益者社員に対する教育・指導を行う。

対価の額の設定方針:役務提供者から派遣した出張者への日当、交通費、宿泊費等の関連費用については、実費額を役務受益者が支払う。

この場合のポリシーは、あくまでもマスターファイルの1つの項目でしかなく、これを基にローカルファイルやマスターファイルを作成する性格のものにはなり得ません。もちろん簡易版のポリシーにおいても、(記載はしませんが)機能・リスク・資産には十分配慮して作成しています。

 

さて、ローカルファイルの目次項目の6~10まで記載しようと思い書き始めましたが、予想以上に長くなってきたので8:「独立企業間価格算定方法の選定」以降の項目については、次回に持ち越そうと思います。

移転価格ドキュメントの作成において最も大切なことは、多国籍企業グループの全体像をしっかりと把握し、各国間の取引内容に齟齬(同じ取引類型において理由もなく違う値付けを行っているような場合)がないこと、移転価格ポリシー・マスターファイル・ローカルファイルの内容に齟齬がないこと、つまり、全体像の把握が最も大切になります。ただし、多くの企業では移転価格のドキュメンテーションをする前に、ビジネスが既に走ってしまっているため、それをそのままに書いてしまうと齟齬が出てしまうこともあります。この場合においても、リスクが顕在化する前にしっかりと対策を取り、将来の移転価格による追徴課税の可能性を極力抑えることが重要となります。

私は移転価格ドキュメントを作成する前(業務が成立する前)に、会社の取引状況のヒアリングをさせていただいています。どのようなところにリスクがあるのかをしっかりと把握していただいた上で、移転価格のドキュメンテーションの作成に移ってもらえれば幸いです。※初回のヒアリングは無料で対応させていただいています。

インドネシアの移転価格税制⑳ ~実務上の問題点~

2017 年 7 月 27 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。今回の移転価格税制のコラムは、インドネシアの移転価格実務で実際に起こっている問題点をお伝えいたします。

インドネシアの移転価格実務で一体何が起こっているのか?

それは・・・・、「比較対象企業の抽出が困難」であるという問題です。基本的には移転価格税制はその価格の適正性を(資本関係のない)第三者との取引価格と比較して検証するものですが、インドネシアにおいてはこの検証対象となる第三者が圧倒的に少ないという現状があります。

具体的には、経済的分析(ローカルファイルにおいて、比較対象企業の抽出を行い、自社の利益率が比較対象企業の独立企業間レンジに収まっているかを確認する手続き)における比較対象企業のスクリーニングにおいて企業データベースを使用するのですが、このデータベースに登録されているインドネシアの企業数が、日本を含めた他国に比べると圧倒的に少ないという現状があります。このただでさえ少ない登録企業を更に、「インドネシア」、「上場企業」、「産業分類コード」、「支配関係」などによりソートをかけると比較対象企業の母集団が10社を切ってしまうことなども正直あります。

ただし、この母集団はインドネシアにおける広い意味での同業他社を集めたにすぎません。この中には使えない(財務データが入っていない、全く別の製品を取り扱っているなど、比較可能性が担保できない)企業もあるために、ここから更に定量分析(財務データに比較可能性があるかを判定する分析)と定性分析(財務データ以外の製品、機能、リスクなどの要因に比較可能性があるかを判定する分析)が行われ、比較可能性がある企業のみを抽出します。

比較対象企業の少ないインドネシアにおいて、厳密に定量分析及び定性分析を行うと最終的には比較対象企業が0社となってしまうこともあります。0社とはいかないまでも、比較する企業の数が少ないと、比較したとしても客観性がなくなってしまい、指摘される可能性が高まります(税務当局も同様のデータベースを利用しているために指摘は「抽出企業による問題ではなく、TNMM(取引単位営業利益法)の利用そのものが問題」になると考えています⇒詳細は、下記「利益分割法=PS法」に該当する部分を参照)。

元々このスクリーニングによる比較対象企業との比較可能性の担保は、データが豊富に入っている国(例えば日本)においても問題になることがありました。諸外国においてTNMM(取引単位営業利益法)が採用されているのも、基本三法(独立価格比準法、原価基準法、再販売価格基準法)では比較可能性が担保できないという問題点があるためです(TNMMは、製品の多様性の差異や機能の些少な差異は認容する方法のために比較対象企業の絶対数を稼ぎやすい)。

データが豊富に入っている国においても比較対象企業数を十分に確保することができずにTNMMにて評価されることが多い移転価格税制の検証において、インドネシアはTNMMを採用したとしても十分な比較対象企業数を確保することは難しい現状があります。

もちろん少ない比較対象企業においてTNMMで検証するのか、それとも他の方法によって検証するのか、比較対象企業はないという結論にするのかは会社によって判断は異なります(比較対象企業はないという結論のレポートはローカル会計事務所が作成したものでたびたび目にしますが、私的にはそれをもって適正と主張することは難しいと思っています)。

上記で、「抽出企業による問題ではなく、TNMM(取引単位営業利益法)の利用そのものが問題」とお伝えしましたが、比較対象企業(比較対象取引)を見出すことができなかった場合の最も理論的な独立企業間価格の算出方法は、利益分割法=PS法(算出方法詳細:http://futureworks-inc.jp/blog/545, http://futureworks-inc.jp/blog/573)が該当します。

PS法の一種である寄与度利益分割法は、「取引全体に係る合算利益を取引当事者の貢献割合でそれぞれに配分するよう独立企業間価格を算定する方法」とあります。つまり親子間取引のサプライチェーン全体での合算利益を親会社と子会社の貢献割合でしっかり割り当てるということがこの方法の目的です。この方法は一般に同種又は類似した比較対象企業(比較対象取引)がない場合に適用されます。そのためTNMMで比較していたとしても税務当局から「寄与度利益分割法」の採用を求められてしまうことがあるのです。ちなみに上記の「比較対象企業がない」という結論では適正性を主張することが難しいということはPS法の採用が求められるためです。

ただし、日系企業の多くはIDR(インドネシアルピア)の不安定さをリスクと感じており、可能な限り利益は日本につけるように取り組んでいます(キャッシュを円で持っておきたいという思惑があります)。そのため、多くの日系企業が、この「寄与度利益分割法」により検証すると日本に利益をつけすぎている現状(日本は黒字なのに、インドネシアは赤字など)を見ることができるのです。

実務上では、「寄与度利益分割法」の採用も視野にいれて、TNMMを利用しなければなりません。なんでもかんでもTNMMを採用すると、後で問題になることが多く注意が必要です(インドなどの諸外国ではTNMMの濫用が問題となっており、TNMMの適正性が否定される判決も出ております)。移転価格税制におけるドキュメンテーションは、将来の多額の追徴課税リスクが顕在化しないために行うものです。ただし、ドキュメントを作ったからといって追徴課税リスクがなくなるわけではなく、そのドキュメントを基に「何をするか?(どのようにサプライチェーンを変更するか?)」がポイントになります。

日本への利益還流は、基本的に「配当」「利息」「取引価格」のいずれかによって行われます。日本への利益還流は大きなテーマですが、例えばインドネシア一国だけ「取引価格」によって利益を大きく還流している場合なども問題となることですので、その他の各国を含めてグループ全体で足並みを揃えてもらえればと思います。

当社ではマスターファイル、ローカルファイル(インドネシア、タイ、日本)の作成及びその後の国際税務アドバイザリーを行うことが可能ですので、これらの業務につきお困りのお客様がいらっしゃいましたら、お気軽にお問合せいただければ幸いです。

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