注意!VATの税額控除が取れません!

2018 年 1 月 10 日

皆様こんにちは。㈱フューチャーワークスの片瀬です。

VAT取引

VATの問題が顕在化してしまうのは、物流と商流が一致しない取引、具体的には上記の図のように製品はインドネシア国内で輸送され、請求は日本親会社を介すような場合です。製品の最終消費地はインドネシア国内であるためにインドネシアでVATが理論的には課されるはずです。そこで問題です。

<質問>

Q:請求①にVATを含めますか?

VATは納税義務者と税額負担者が異なる税金です。もし上記の取引が、商流と物流が一致するインドネシア国内取引であればA社から受け取ったVATを子会社が預り、子会社が支払った他のVATとの差額を国に税金を納めるわけです(預り金としての性質)。そのため、実態としては「納税義務者が子会社」であり、「税額負担者がA社」です。納税義務者はあくまでも子会社とされることがあるためにリスクを回避するのであれば請求①にVATを含めた方が良いようにも見えますが・・・。

<質問>

Q:もし請求①にVATを含めた場合に、このVATはどのように解消されるのでしょうか?

このVATの取扱いは非常に厄介です。もちろん親会社において消費税の税額控除が取れる訳はありません(日本の消費税ではないため)。親会社からの請求②にVATを含めて請求したとしても、インドネシアのタックスインボイスの形式を満たしていないためにインドネシアにおいてもVATの税額控除が取れません。そのため、この請求①に含めたVATの行き場所がなくなってしまいます。

本来、リバースチャージ方式(納税義務者と税額負担者が同一になる方式)を利用することができれば、請求②を受けた際にA社が自己申告においてVATを納めるべきです。ただ、インドネシアにおいてはリバースチャージ方式による自己申告の制度はありません。そのためこのVATは税額控除を取ることができず、日本本社において法人税の申告上にて損金(税務上の費用)として計上することが一般的となります。

※税額控除であれば100%税金を減らす効果がありますが、損金経理であれば日本の法人税率分の約30%しか税金を減らす効果がありません。

以前メキシコでこれが実際に起こった際には、日本親会社をメキシコのPEとして認定させ、商流自体も国内で行われていると税務当局に主張しましたが、こんなテクニカルな主張はインドネシアでは通用するはずもありません。

そのため実務上では、請求①にも請求②にもVATを含めないことが多い現状にあります。ただし、取引は国内取引の範疇であるために、VATの納付漏れを指摘されてしまうリスクは往々にしてあります。そのため可能であればこのような商流でビジネスはしないことです。モノはインドネシア国内で動いているためインドネシア国内でビジネスを完結させるべきです。どうしても日本本社を介して取引を行いたい場合には、金額的なリスクがどれくらいになるか、コンサルに確認してから取引を行うようにしてもらえればと思います。

 

不明点等があれば以下の連絡先までご連絡ください!
片瀬 陽平(yo-katase@futureworks-inc.jp)

日本本社への利益の還流

2018 年 1 月 10 日

皆様こんにちは。㈱フューチャーワークスの片瀬です。

インドネシアにおいて利益が出始めた日本企業は、日本本社へどのように利益を還流しようかと考え始めます。ルピアが安定していない中、ルピアで持ちたくないという思惑が日系企業にはあり、結構無茶な方法で利益を還流している会社も中にはあるようです。基本的に親子ローンの返済は現地の資金繰りを圧迫するので、利益を打ち消せる方法(税金を支払わないで良い方法)を模索し始めます。※親子ローンの返済は、負債の返済であり、利益の還流ではありません。そのため資金繰りが圧迫してしまわないように注意が必要です。

ただし、日本親会社への利益の還流方法として取れる方法は実はそこまで多くはありません。基本的には、以下の3つぐらいしかありません。

※念のためにそれぞれの方法でインドネシアから日本に還流した場合の源泉税率を記載しておきます。

【利益還流方法】

①配当により還流      ⇒10%

②利息により還流      ⇒10%

③取引(棚卸・役務・無形資産)により還流       ⇒ロイヤルティ10%

※租税条約上のパーセンテージ(一定の場合を除く)。租税条約適用の実務対応は上記の「●新DGT-1フォームの問題点・実務上の対応」をご確認ください。

配当による還流は、「課税済利益の還流」であり、既にインドネシア国内においてインドネシアの法人所得税が課税されています。利息による還流と取引による還流は、「課税前利益の還流」であり、インドネシアの課税対象となる所得金額を減少する効果があります

【配当により還流する場合】

配当での還流は「課税済利益の還流」であり、インドネシア子会社から日本親会社への支払いの際に10%の源泉税が課税されます。日本本社側では「外国子会社配当益金不算入制度」の適用となり、「課税済利益の還流」であるために日本で益金に算入(税務上の収入として計上)する必要はありません。この配当に係る源泉税の取扱いは「外国税額控除の対象」とならず、「損金算入(税務上の費用として計上)」もなされません。

※この部分は2015年に日本において税制改正があり、経過措置を経た2018年4月1日より開始する事業年度から下記の通り取り扱うこととなります(配当が海外で課税されない場合には、日本において課税しましょうという改正)。

<2015年税制改正>

①海外の法令において配当額の損金算入するものとされている場合には、その配当額における日本の取扱いは「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外(海外:損金算入、日本:益金参入)

②海外において配当額の一部損金算入がなされた場合には、一定の要件の下、その損金算入額に対応する配当額については「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とすることも可能

③これらの場合(①及び②の場合)において、「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とされた配当に係る源泉税については、外国税額控除又は損金経理をすることが可能

【利息により還流する場合】

利息での還流は「課税前利益の還流」であり、インドネシア子会社から日本親会社への支払いの際に10%の源泉税が課税されます。「課税前利益の還流」であるために、インドネシア子会社側で「損金へと算入」することが可能であり、日本親会社側では「益金へと算入」する必要があります。既に支払っている源泉税について、二重課税を排除するため(利息は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。

なお、インドネシアにおいて「過少資本税制(「資本金」と「借入金」、資金を調達するという意味では同じ性格ですが、利益の還流にあっては「配当」と「利息」と、その還流方法は異なります。配当は「課税済利益の還流」であるためにインドネシアにおいて法人税が課されますが、利息は「課税前利益の還流」でありインドネシアの法人税額を減少させる効果があります。過少資本税制とは、有利な利息での還流を制限する法律。)」の適用があり負債資本比率が4:1を超える場合に対象となります※2015年9月9日の税制改正。

そのため負債資本比率が4:1を超える借入を行っている場合には、その超える部分に対応する支払利息が「損金不算入」となってしまいますので、特に製造業等の借入が多い会社様はご注意ください(そのためDES:「負債と資本の交換」を行っている会社も多い)。

【取引によって還流する場合】

取引での還流は「課税前利益の還流」であり、その内容は更に3つに分類することができます。

①棚卸資産の取引価格による還流

②役務提供(事業所得)の取引価格による還流

③無形資産(使用料)の取引価格による還流

この中で源泉税が課されるものは③の使用料(ロイヤルティ)の取引価格による還流だけであり、その源泉税率は10%です。それ以外の取引では源泉税が必要ありません(租税条約を結んでいるため、本来②の事業所得に該当する場合の役務提供については、源泉税が必要ないのですが、税務調査時に源泉税の徴収漏れを指摘されることがかなり多いようです)。

既に支払っている(使用料の)源泉税については、二重課税を排除するため(使用料は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。ちなみに源泉税を支払わない①と②の取引に関しては、当然ながら「外国税額控除」の適用はありません。

また、「役務提供(事業所得)」と「使用料」の違いは、無形資産などの権利、技術やノウハウが他方(親会社から子会社)へ移転しているかによって判断されます。こちらは判断が難しいところなので個別に確認が必要になりますし、(慣行としての)取り扱いも不透明な部分がありますので担当するコンサルに確認をお願いします。

※その他に、日本負担給与の支払や出張者の日当の支払等でも利益の還流を行うことができます。

このように利益の還流については、その取るべき方法の数自体は少ないですが、税務リスクが複雑に絡む部分となります。いずれの方法を取ったとしても、税務リスクを確実に排除することは難しいため、(少し語弊があるかもしれませんが)現状のインドネシアでは、「当局が発見しづらくなる方法」と「正常な方法」についても比較検討することが必要になるかもしれません。※「当局が発見しづらくなる方法とは」、例えば日本としてはロイヤルティで回収したいけれどもロイヤルティは税務調査で指摘を受ける項目なので、棚卸資産取引にその分の利益を負担してもらう方法など。←移転価格文書を作成するので、その上で利益は出ていなければなりません。

不明点等があれば以下の連絡先までご連絡ください!
片瀬 陽平(yo-katase@futureworks-inc.jp)

新DGT-1フォームの問題点・実務上の対応

2018 年 1 月 10 日

皆様こんにちは。㈱フューチャーワークスの片瀬です。

日本法人へ配当などで利益の還流を行う場合、インドネシア側で源泉税が徴収されますが、例えば非居住者への配当金支払にかかる源泉税率は国内法では20%とされています。しかし、日本とインドネシアは租税条約を結んでおり、租税条約上では10%となります。どちらか低い税率が優先されることになっていますので、この場合10%となりますが、この租税条約上の税率を適用するためにDGT-1というフォームを税務署に提出する必要があります。

このDGT-1は2017年8月1日からフォーマットが改訂されていますが、実は新DGT-1フォーマットについてインドネシア税務署と日本税務署の連携がうまくなされていないという問題があります。そのため、この新DGT-1フォーマットの書き方について困っている企業も多いようです。この問題点と、実務上の対応方法について見ていきたいと思います。

DGT-1フォームは、支払いを受ける側の日本法人が日本の税務署で認証を貰ってインドネシア法人へ送付し、認証済みのフォームをインドネシア法人が月次の源泉税申告と共にインドネシア税務署に提出します。これによって、このフォームに記載されている日本法人が、実態のある日本居住者であることの証明となり、租税条約上の税率の適用を受けることができます。

今回問題となっているのは、3ページある内の1ページ目の下記のフォームです。

旧フォーマットでは、下記図の通り、PartⅢの「Date」の欄に発行日(日本の税務署に認証を依頼した日付)を記載することになっており、この日付から1年間は有効とされていましたので、1年に1回の発行で問題ありませんでした。

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旧フォーマット。1ページ目は発行日から1年間有効とされており、PartⅢの日付の記載は発行日のみ。

出典:インドネシア国税庁(http://www.pajak.go.id/?Itemid=156&option=com_docman&limitstart=5

しかし、新フォーマットのPartⅢでは下記のように、「居住証明を受ける期間」を記載することになっています。

日本の税務署としては、「将来の日付の居住証明」をすることはできず、PartⅢの期間も過去の日付でしか記入できないとしています。そのため、取引ごとにDGT-1を作成し、インドネシアで申告しなければいけないという問題が発生しています(空欄にしておいたまま認証を受けることも不可です)。

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新フォーマット。PartⅢの日付の記載は「居住証明を受ける期間」を示すが。。

出典:インドネシア国税庁(http://www.pajak.go.id/?Itemid=156&option=com_docman&limitstart=5

実務上の対応として、下記が考えられます。

(1)取引が行われる月ごとにDGT-1を作成する。

(2)現在までの日付にて税務署から認証をもらい、複数枚作成しておく

(3)過払いがあった場合には還付を受けることができるとされていることから、国内法の源泉税率で一旦納めておき、会計期末に過去1年分の期間を証明したDGT-1を発行した後、還付申請をする。

(1)が一番手間ではありますが最も安全であり、現状は実務上この方法で行っている企業が多いようです。(2)では、実際は各取引について、過去の日付の居住者証明にて対応することになりますが、これによって指摘を受けるケースは今のところ少ないようです(2017年10月現在)。(3)は可能ですが、還付申請による税務調査が入る可能性が高いです。

このような実態から、再度運用方法やフォーマットが変わる可能性がありますので、注視していく必要があります。

不明点等があれば以下の連絡先までご連絡ください!
片瀬 陽平(yo-katase@futureworks-inc.jp)

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