個人所得確定申告の留意点

2019 年 1 月 15 日

今回は個人所得確定申告についてです。

個人の課税期間は1月1日から12月31日までの暦年で、確定申告は翌年の3月31日までに行います。

インドネシアでは全世界所得課税方式を取っていますので、日本側で支給された給与も合算して申告をすることになります。

確定申告時に合算する日本の所得に関して、総支給額(グロス)を使うか、社会保険料等を控除した手取り額(ネット)を使うか、という問題がありますが、

社会保険料等は、本来は個人のベネフィットであり、代わりに会社が支払っているだけですので、厳密には社会保険料を控除する前の総支給額(グロス)を使うこととなります。

 

 

 

■インドネシアでの確定申告対象者

KITASを取得しているが、NPWPを取得していない(かつ1年のインドネシア滞在日数183日以下)という方について、「インドネシア居住者とならないので、インドネシアでの納税は不要」と誤解をされているケースがあります。

しかしながら、そもそもインドネシアで納税するというロジックは、①KITASを持っている⇒②インドネシアに居住する意思がある⇒③居住者扱いになる⇒④NPWPを取得しなければならない⇒⑤全世界所得をインドネシアで確定申告

という流れになります。

 

居住者でNPWPを取得していない場合は、一応罰則規定もございます。

そのため、もしもKITASを取得していて、NPWPを取得していない場合は、速やかに取得・納税するのが安全です。

 

■赴任初年度の処理

KITAS及びNPWPを取得した月から、全世界所得課税となりますが、

KITASを取得してからNPWP取得まで手続きに時間を要す場合があります。

こういったケースですと、KITAS取得月とNPWP取得月が異なり、どちらを基準に納税するのか、という問題があります。

前述の通り、KITASを持っている時点で税法上の居住者扱いになりますので、KITAS取得月からの課税となると考えられます。

なお、赴任初年度は、後述する予納(PPh25)がありませんので、毎月の納税はインドネシア支給分のみに対する課税分(PPh21)のみとなります。

 

■帰任時の処理

帰任時の処理については、留意事項が多くございます。

まず、インドネシアでは予納(PPh25)という制度があります。これは、前年度の確定申告に基づいて、前年度の総納税額を12ヶ月で割って、毎月納税をする、という制度です。

例えば、前年度に確定申告追納も合わせて合計で120Juta納税していたとしたら、120Juta/12 = 10 Jutaルピアを毎月納税することになります。

ここで前年度の総納税額は、当然ながらボーナス等も含んだ課税所得に対して算出された税額です。

例えばボーナス月が6月・12月で、5月に帰任になった場合に、この予納を5月まで続けていると、必然的に納税しすぎているという状態(還付請求ポジション)になります。

帰任時期が決まっており、確実に過納税になる予定であることを税務署に証明できれば、この予納を止めることもできるとされていますが、実務上はかなり困難です。

この場合、

①予め前年度のボーナス支給額を調整しておく

②ペナルティー覚悟で予納(PPh25)の支払いを止める

③予納を続けて、多少の過払いを容認する

④予納を続けて、還付請求をする

という選択肢があるかと思います。

 

④の場合は、確実に個人に対する税務調査が入ることになります。

日本側の所得証明、源泉徴収票、銀行明細などの追加の書類提出を求められ、調査も長期に渡ることが多いことから、可能な限り還付請求はしないようにすることが肝要です。

 

また、帰任した月までの所得をインドネシアで確定申告することになりますが、帰任時には受け付けてもらえず、翌年1月以降にならないと受け付けてもらえない税務署が多いです。(所轄の税務署によります)

この場合、インドネシアのコンサルタントなどに委託して、翌年に確定申告を済ませてもらうことになりますので、事前の計算と委託先の選任が必要になります。

 

 

 

来月末が期限ですので、納税額の確認や手続きを事前に行っておくことをお勧めいたします。

 

退職金シミュレーション

2018 年 12 月 1 日

今回は退職金の計算についてです。

 

インドネシアでは、従業員が退職する場合、勤続年数に基づき、下表の通り「退職手当」と「勤続功労金」を退職金として支払う必要があります。

※実際は退職理由によって異なり、上記をベースにして整数倍して計算されます。

 

また、上記とは別に、「損失補償金」として、年次有給休暇の買い取り及び上記の退職手当・勤続功労金の15%の支払いが必要となります。

 

上記3つの退職金「退職手当」、「勤続功労金」、「損失補償金」について、勤続年数別にシミュレーションした結果が下図の通りです。

 

条件:

解雇時の固定給10Jutaルピア/月

整理解雇(経営の合理化)

 

 

見ての通り、勤続功労金が上乗せされる3年目~4年目の間が急なカーブになっているかと思います。勤続年数7年~8年で20か月分の計算となり、インドネシアの労働法が労働者の保護に手厚いといわれている所以でもあります。

 

なお、退職金は基本給+固定手当(毎月一定で支給される手当)を基に算出されます。

そのため、変動給(皆勤手当など)を設けてバランスを考えることが肝要です。

ただし、固定給は全体の給与の75%以上を占める必要があります。

不正を防ぐために大会社が行っていること

2018 年 9 月 29 日

前3回にわたってお送りしてきましたい「インドネシアで実際に起こった不正事例」についてですが、今回は不正を防ぐために大会社が行っていることを簡単にお伝えします。過去3回のコラムも下記に載せておきますので、是非ご確認ください。

 

<前回・前々回のコラム>

インドネシアで実際に起こった不正事例(その1):http://blog.livedoor.jp/bnthailand-indonesia/archives/7841992.html

インドネシアで実際に起こった不正事例(その2):http://blog.livedoor.jp/bnthailand-indonesia/archives/8312002.html

インドネシアで実際に起こった不正事例(その3):http://blog.livedoor.jp/bnthailand-indonesia/archives/8558333.html

 

 

まず、1回目の不正事例の記事で載せた下記の業務フローを改めてご確認いただければと思います。こちらも不正が起こらないために必要なものですが、それは一部でしかありません。

 

なぜ一部でしかないかというと、この業務フローというものは現状を表すものですが、反対の側面から見てみると、「現状しか表さないもの」なのです。現状とあるべき業務フローを見比べて自社のコントロールが弱い部分をプロテクトしていくものが必要になります。

 

大会社ではこの問題を解決するために「内部統制」を行い、統制ルールの基で海外子会社の管理を行っています。内部統制実務においては、不正が起こらない体制を構築するために、「業務フロー」、「業務記述書」、「RCM(リスク・コントロール・マトリックス)」の3点セットを作成します。

 

業務フロー:現状の業務フローを表します。

業務記述書:業務フローの取扱い説明書です。ポイントやタイミングを含めて解説します。

RCM:業務フローに並走させ、現在のフローにどのようなリスクが含まれているか、どのようにコントロールを行っているか(行っていくべきか)を細かく記載した一覧表を作成します。

 

さて、例として出荷フローの一部分を抜き出してみました。また、紐づくRCMも一部抜き出しています。このように抜き出してみると、この出荷フローには目に見えない「恣意的取引価格操作」「取引の隠蔽」「架空計上」「入力ミス等」などのリスクが含まれているということが解ります。

 

本来はリスクの摘要列の右側にもう何列かあり、そこにコントロールの詳細などを記載して大きな一覧表としていきます。上場企業ではこれが法定されており、かなり細かな「内部統制ルール」を作り込まなければなりませんが、中小企業では気になる部分を重点的に作成していくべきと考えています。

 

特に海外子会社においては、以前にお伝えしたように「資産不正(横領)」が多いという現状があります。そのためその部分だけでも内部統制ルールを作るべきであり、親会社からみたブラックボックスをなくすこと、海外で特に多い「資産不正(横領)」をなくすこと、これらをまとめた内部統制ルールは親会社も巻き込んで仕組化していくべきです(親会社が何を問題と考えているか、現地の実態として何を本当はみなければならないのか)。

 

仕組みが出来上がれば、自動的に不正はなくなっていきます。重要なのは仕組みづくりであり、従業員の教育ではありません。

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