オムニバス法の条件付き違憲判決

2022 年 3 月 23 日

2021年11月25日に、雇用創出法(通称オムニバス法)に対し、「条件付き」意見判決が最高裁から出されました。オムニバス法は、2020年11月に78の既存の法律をまとめて改正したものですが、労働法・投資法・税法など多岐にわたる大きな改正であり、関連法規も併せて広範な影響を及ぼしていました。

違憲判決が出される場合、原則としてただちに無効とされますが、今回の「条件付き」違憲判決では、既存のオムニバス法及び関連細則を現時点では有効とし、2年間の猶予期間が与えられています。この猶予期間内に、適切な手順で改めてオムニバス法を改正しなければ、無効となります。「違憲判決がでたから、オムニバス法が無効となる」と勘違いして、就業規則の改訂などを見送っている会社もあるようですが、前述の通り今のところ有効です。裁判所の判決を受けて、政府は「適切な手順で改正を目指し、主な内容は今のオムニバス法と変わらないであろう」、という見解を発表しています。

 

今回は、オムニバス法の条件付き違憲判決とその影響について、詳細を見ていきたいと思います。

 

【背景】

オムニバス法は施行当時より、手続き上の瑕疵があるのではないかという指摘があった。これは、国会と大統領の承認を得た後に法案が複数回修正され、世に出回っているドラフトが複数存在するためである。当時政府は誤植や単語の誤りを訂正しただけであるとの見解を発表していたが、内容も若干修正されていることが後に判明した。これを問題視した大学生、教授団、非営利組織等が、オムニバス法の違憲判決を求めて集団訴訟を提訴した。

原告の主張は主に以下の3点。

  • オムニバス法という1つの法で、複数に跨る既存の法を改正する手法が曖昧である。オムニバス法では、それ自体が個別の新しい法律であるのか、既存の法案の改正であるのか、それとも既存の法律の廃止なのかが明確でない。
  • オムニバス手法で法を改正することは、インドネシアの既存法体系の中で、明確には認められていない。
  • 法が施行される直前に、複数のドラフトが作成されており、法に則った適切な手順を踏んでいない。

 

【判決の要旨】

9人の裁判官で審査された今回の判決では、裁判長を含む4人が合憲、5人が違憲判断をした。

立法過程には、最大限市民の参加を含む必要があるとして、今回の立法手続きには瑕疵があったことを認める。一方で、本法律をただちに無効とすることによる、影響の大きさを考慮し、当該瑕疵を「修正」するために2年間の猶予を与え、その間はオムニバス法及び既存の関連細則は有効とする。政府に対し、新たな施行細則の発行を停止するよう命ずる。猶予期間内にオムニバス法が改正されない場合には、同法は無効になることとする。

なお、本判決には遡及効果はない。仮に猶予期間内に瑕疵の「修正」が行われず、無効となった場合においても、その間にオムニバス法の則って行われた法行為を当然に無効とするものではない。

 

【違憲判決の影響】

ここでいう瑕疵の「修正」という点について、裁判所は意味を明確にしていませんが、立法手続に関する法律に則って、所定の段階を経て改正(再度施行)をすれば、瑕疵の「修正」ということになると思われます。前述の通り、政府は判決を尊重したうえで、ただちに法改正を準備し、是正措置を取るとしています。もともとオムニバス法は労働者側に不利な内容を含んでいたため、デモも一時起こっていました。国民も今回の違憲判決が、「条件付き」であるとは広く認知されておらず、違憲判決が反発の声を抑えることに一役買ってしまった、という意見もあるようです。

再度立法府の手順を踏んだ際に、最終的に否決されれば無効となりますが、猶予期間(2023年11月まで)は、2024年の大統領選前のため、現政権下で改正されることとなり、否決される可能性は低いと思われます。

オムニバス法は、特に労働法の改正では会社側に有利な点も多いですが、実際に適用するには就業規則の改訂が必要になる場合があります。今回の違憲判決のニュースを見て、改訂を様子見している会社もあるようですが、改訂を進めても問題ないといえそうです。

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