税務調査の流れと留意点-Ⅱ

2021 年 10 月 26 日

 

コロナ禍以降、インドネシアでは財政バランスが急速に悪化しています。財政補填のため、2020年から税務調査が頻繁に行われるような傾向にあります。また、指摘内容も言いがかりのようなものが多くなっているようです。これは、1人の税務担当官が、多数の税務調査案件を抱えているため、短期間で調査を終えざるを得ないことが影響しているようです。また、日本の感覚では信じられないことですが、税務署ごとにチャレンジングな税収ノルマが掲げられています。

インドネシアの税務調査は複雑です。現地駐在員がよく理解をしていないと、なにも知らないままローカルスタッフが進めてしまって、コントロール不能のまま、気づいたら徴税通知が届いている、なんてこともよく聞きます。

税務調査の流れは以下の通りです。

①税務調査開始通知書(SPPP)

②資料提出

③資料の精査及びフィールドワーク

④調査査定書(SPHP)及びポジションペーパーの回答

⑤ポジションペーパーへの回答

⑥徴税通知書(STP)の発行

⑦異議申立て

⑧税務裁判

前回は①~⑥までを見ていきましたので、今回は、⑦異議申し立ての流れと留意点を見ていきたいと思います。

 

【税務調査の流れと留意点】

 ⑦異議申立て

税務調査が完了し、徴税通知書(STP)が発行された後、この内容に不服の場合、次の異議申し立てのプロセスに進むことができます。STPまでの税務調査は、管轄税務署が担当しますが、異議申し立ては地方国税局が担当することになります。STPから3か月以内に、異議申し立てを行わない場合、STPの内容に同意したと見なされ、異議申し立ては不可能になります。

異議申立てに進む場合、STP通りの金額をいったん支払って進むのか、払わずに進むのかを選択できます。支払って進み、仮に異議申し立てが認められた場合、その分の利息を請求できます。払わずに進み、仮に異議申し立てが認められなかった場合、徴税金額にさらに50%上乗せされた金額が課せられます。

近年の統計では、異議申し立ての段階では納税者の主張が却下されることが多くなっています。その一方で、税務裁判まで進んだ場合に、納税者側の勝率は7割前後で推移しています。したがって、税務裁判まで進む覚悟のうえであれば、十分に勝訴できる案件も多いです。そのため、この異議申立ての段階で今後の戦略を決めておくことが重要になります。ここで考慮すべきことは下記の通りになります。

a. 異議申立ては誰が担当するか

b. いったん納税をするだけのキャッシュフローに余裕があるか

c. 過去の判例に照らして、どの程度異議申立てが認められる可能性があるか

d. 過去の判例に照らして、どの程度税務裁判に勝訴できる可能性があるか

e. 異議申立てが認められなかった場合の、追加の50%のペナルティーは、許容できるリスクの範囲であるか

f. 異議申立てが認められなかった場合に、税務裁判まで進むか

g. 税務裁判まで進むことを想定している場合、その段階でいったん納税をしたうえで進むか

h. 税務裁判を担当できる税理士・弁護士がいるか、またそのコストはどのくらいになるか

 

a. の「異議申立ては誰が担当するか」ですが、税務調査対応まではしたことがある財務マネジャーは

一定程度いると思いますが、異議申立てまで自身をもって対応できる財務マネジャーはほとんどいないのが現実です。そのため、税理士やコンサルタントに依頼をすることが一般的です。

 

異議申立てのプロセスは、まず異議申立て申請書を管轄の税務署に提出することから始まります。通常1~6カ月程度で、地方国税局から資料要求がなされます。その後は税務調査の②~③の流れに近いものとなりますが、異議申立てでは税務調査と比べて面談の機会が少ないことが多いです。通常10~12カ月程度で、審査結果通知(SPUH)が送られてきます。SPUHを受け取ったら、内容を精査して、不服があれば10営業日以内に反論書を提出します。反論書を提出しない場合、内容に同意したと見なされますので、迅速な対応が必要です。反論書を提出したのち、最終討論会議の日程が設定され、地方国税局に呼ばれることになります。そこで最終的な決定が言い渡されます。この段階では決定の説明のみになりますので、会議の中で新たな反論をしても覆ることはありません。

 

異議申立て決定が言い渡されたら、決定通りに納税をするか、控訴状を税務裁判所に提出して、⑧税務裁判に進むかの選択になります。税務裁判の流れと留意点は次回以降見ていきたいと思います。

 

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