売掛金を回収できない場合の税務及び債権保全に関する法務

2020 年 8 月 19 日

今回は売掛金を回収できない場合の税務や、債権保全に関する法務についてです。

インドネシアは世界でも債権回収が最も困難な国とされています。(取引信用保険大手調べでは7位にランク。ジャカルタ・グローブ紙2月27日付)

さらにコロナ禍において、少なからず売掛金が回収できないケースや、支払期日の延長の交渉を受けるケースが多くなってくる可能性があると思います。

そこで、回収できなかった場合において、どのようなケースで貸倒損失処理ができるのか、また債権保全に関して取り得る対応をまとめました。

 

日本においては、督促を行ったうえで客観的に支払不能であることが認められる場合には、貸倒損失として、損金処理することが可能です。

インドネシアにおいては、損金処理のハードルが高く、以下の条件をすべて満たす必要があります。

1.不良債権リストの国税総局への提出(これは年次法人税申告書に添付されます)

2.会計帳簿への記録

3.以下いずれかによる回収不能であることの証明

a.債権債務者間の返済不履行に関する、公証済みの合意(相手先が合意することはまれで、実務的にほぼ不可能と思われます。)

b.裁判所への届け出

c.刊行物で公にされていること

※上記1.に関しては、50Juta IDR未満の場合は添付が不要です。

※3.c.の刊行物とは、全国紙、雑誌、その他の印刷媒体への発表とされており、比較的広く定義されています。

※関連会社への貸倒損失は、損金算入できません。

※過去の実績等から貸倒のリスクに備えて貸倒引当金を計上しているケースがあると思いますが、引当金は損金算入ができません。

 

 

このように損金算入のハードルは非常に高くなっていますので、現実的には正攻法で損金算入をすることが難しいです。そのため、収益は計上したが、貸倒損失は損金算入できない、といったことが起こり得ます。

 

別の対応としては、債権を売却してしまう、ということが考えられます。

一定の債権譲渡損は、損金算入が可能です。

日本ではサービサーといわれる債権回収会社が、不良債権を買い取って、取り立てを代わりに行うことがあります。(サービサーは貸倒懸念がある債権を主に取り扱うという点で、ファクタリングとは異なります。)割り引いてでも売却してしまって、債権譲渡損を損金算入するという方法です。

ただし、インドネシアではサービサーがあまり普及していない実情があります。これは、独特なインドネシアの民法からくるものです。

 

インドネシアの民法上、金銭債権は「動産」と定義されています。端的にいってしまうと、モノである、ということです。そして、債権譲渡をするには以下の2つの要件を満たす必要があります。

(1) 債権譲渡の合意が譲渡人と譲受人との間で書面によりなされること。

(2) 債務者の承諾又は債務者への通知が書面によりなされること。

これらの要件が、インドネシアでサービサーを普及させるのを難しくさせています。

 

以上のように、債権回収もさることながら、貸倒の損金参入も難しい事情がありますので、インドネシアでは半ば強引な取り立ての方法として、破産法を使って、相手先に破産申し立てをされるケースがあります。

裁判所による破産宣告がされると、現金没収及び事業の停止命令が行われ、清算手続きに入ります。破産法では、2名以上の債務者から弁済期の到来にも関わらす、弁済されない場合に、申し立てが認められる、とされています。これを利用して、相手先にプレッシャーをかける方法が横行したことがありました。ただし、債務者は「公益のために」破産宣告をする権利を有するとありますので、法の濫用と捉えられる可能性があります。

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