インドネシアと日本どちらで税金を支払うのか?

2018 年 1 月 22 日

皆様こんにちは。(株)フューチャーワークスの片瀬です。インドネシアは税金のルールが不透明であり、混乱することも多いと思いますが、基本的なルールは他国と違いありません。まずはベースとなるルールを覚えた上で、イレギュラーな指摘にどのように対応するかを考えていただければと思っております。

今日は、インドネシアと日本のどちらの国で税金を支払うかをテーマとし、課税関係の整理を行います。特に日本の税務調査において、「日本側での支払給与」を指摘されることが非常に多くなっていますので、日本親会社のご担当者様にも当該内容をご連携いただければ幸いです。

【インドネシアと日本のどちらの国で税金を支払うか?】
インドネシアと日本のどちらで税金を支払うのか、皆様の頭を混乱させている要因は大きく分けると実は2つしかありません。

【頭が混乱する要因】
①居住性の判断
②国内(外)源泉所得
※これは本当に重要であり、多くの方が居住者だから課税、非居住者だから非課税というふうに理解しているのですがそれは違います。下記をご確認ください。

Q1:皆さんはインドネシアで働いています。インドネシアで給与をもらい、インドネシアで個人所得税を支払っています。さて、皆さんがインドネシアに個人所得税を支払っている根拠は、「①インドネシアの居住者だからでしょうか?」。それとも、「②インドネシアにて勤務(国内源泉所得に該当)しているからでしょうか?」。

「居住者だから全世界所得課税」や「インドネシア勤務なのでインドネシアの国内源泉所得に該当し課税」や「日本では非居住者に該当するために非課税」や「180日以下だから租税条約により非課税」などと、いろんな所でいろんなことが言われています。これをしっかりと理解するためには体系的に理解することが大切で、そのためにまずは居住性と国内(外)源泉所得の定義づけから始めるべきなのです。

A1:居住者であれば「全世界所得課税」、非居住者であれば「源泉地国課税」、つまり居住者は海外で発生したすべての所得を含めて課税し、非居住者は該当する国で生じた国内源泉所得(地理的な意味における国内源泉所得)のみ課税されるということが、近年の一般的な国際課税の原則となっています。本来であれば、税金は所得に紐づくものであり居住性に紐づくものではないために、インドネシアの国内源泉所得はインドネシアで、日本の国内源泉所得は日本でというふうに「源泉地」によって課税が分かれることが最も理論的です。

ただし、国によって国内源泉所得の定義に違いがあり、各国の国内源泉所得と日本の国内源泉所得でそれぞれ課税した場合には、軽課税国への所得の付替えが可能になったり、また、同一の所得に関して二重課税(又は税金の不納付)が発生してしまったりと、不都合が起きる可能性があります。そのために全世界所得課税という課税形式ができ、二重課税となる部分については租税条約上、外国税額控除によって調整するというルールができたのです。

あくまでも理論的には税金が発生する理由は所得に紐づかなければならないために、この全世界所得課税というものは税金のとりっぱぐれをなくすため、又は、二重課税を排除するための形式的なものと覚えていただいて結構かと思います。
【ポイントまとめ】
全世界所得課税:課税の徴収方法
国内源泉所得 :課税の根拠
※日本で受け取っている給与はインドネシアでの勤務に紐づく支給であるために、「全世界所得課税」によりインドネシアにて税金を支払っているのではなく、「インドネシア国内源泉所得」に該当するためにインドネシアにて税金を支払っているのです。

それでは次の質問に移ります。次の質問は、インドネシアで働いているとこれまた非常によく耳にする「183日」という数字についてです。183日を超えるとインドネシアで税金を支払わなければならないので、年間183日を超えないように調整している方もいらっしゃるかと思います。
Q2:この183日という数字が記載されている条文は、実は2か所あるのです。1つは、「Income tax Low No.16 of 2009」、もう1つは、「租税条約15条(短期滞在者免税)」です。具体的な内容は次の通りです。

【Income tax Low No.16 of 2009(意訳)】
次に該当する者はインドネシアの居住者とする。
①インドネシアに住所を有する
②過去の12か月間において183日超の期間、インドネシアに滞在した
③年度中にインドネシアに滞在し、その後もインドネシアに居住する予定である

【租税条約15条2項(意訳)】
日本(インドネシア)の居住者がインドネシア(日本)国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の条件より、日本(インドネシア)においてのみ租税を課することができる。
①当該年を通じて合計183日を超えない期間インドネシア(日本)国内に滞在すること。
※その他一定の条件あり

一見すると同じ内容が記載されているように見えるこれらの条文については、どのように読み解けば良いでしょうか?

A:インドネシア国内法については「居住者の定義」を記載しており、租税条約については「短期滞在者免税」について記載しています。同じようにみえるこれらの内容は実は全く違うものなのです。ポイントは次の通りです。
【ポイントまとめ】
●居住者の定義により居住者に該当した場合
全世界所得課税により課税(課税形式が全世界所得課税となる)
●短期滞在者免税の適用対象に該当した場合
インドネシア国内源泉所得に該当しても183日以下の滞在の場合には免税
つまり183日以下の滞在で免税となるのは、国内法による居住者に該当しないためではなく、租税条約の短期滞在者免税の適用対象に該当するためとなります。

近年では、この短期滞在者免税を利用した課税逃れが国際的に問題となっています(183日以下の滞在の場合で各国の国内源泉所得である場合でも、免税としたいがために担当者を183日ごとに交代させて実際にビジネスを行っている国に税金が落ちなくするスキーム)が、インドネシアにおいてはKITASを取得したと同時に「居住者として全世界所得課税」及び「短期滞在者免税の適用不可」とみなされるために、両方をいっしょくたに考える方も多いのかと思っています。
※この部分の線引きがきれいにされておらずに、「全部インドネシアで払いなさい」というのが現状のインドネシアの実態となります。

ちょっと踏み込んだ記載をすると、例えばKITASは取得しているがNPWP(納税者番号)は取得していない方がいたとします。KITASは短期滞在(工場内での作業で年間183日以下)のために取得しているとしましょう。NPWPがないために納税できない該当者は、税務当局にバレた時には、まず間違いなく「税金を支払なさい」と指摘されることになります。ただし、法律を順序立てて解釈すると、租税条約の短期滞在者免税の適用により「納税は免除されるはずだ!」と主張することが可能です。※実際にどのように取り扱われるかは不明。

はたまた、インドネシア税務当局は、「Income Tax Lowより、KITASの取得により年度中にインドネシアに滞在し、その後もインドネシアに居住する予定である旨の意思表示のためインドネシアの居住者として税金を支払わなければならない」と主張してくることも予想されます。
これも上記を理解していると、居住者はあくまでも全世界所得課税とういう課税形式を決定するものであり、それをもって税金を支払わなければならない根拠にはならないと反論することが可能です(税金を支払う根拠は、国内源泉所得であり、当該所得は国内源泉所得に該当するが租税条約によって免税と認められると)。

この部分の取扱いは正直不透明であり、否認されてしまう可能性の方が現状は高いとは思います。ただし、(理論的正当性を)主張できるのと、できないのでは、かなり印象が違いますので是非ともご認識いただければと思います。

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