インドネシアの移転価格税制⑲ ~マスターファイルの具体的項目~

2017 年 7 月 14 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。前回はマスターファイルの開示事項を次のように記載し、これがマスターファイルの目次になるとお伝えしました。今日はこの目次である各項目に実際の内容をはめ込んで確認してみたいと思います。

【目次】
⇒構成会社一覧(役員一覧、株主一覧)
⇒事業概要
⇒当社の強み
⇒主要商品(製品)の概要
⇒サプライ・チェーン図
⇒主要商品(製品)の市場の概要
⇒役務提供取引に係る移転価格ポリシー
⇒機能・リスク・資産分析の概要(一覧表)
⇒重要な事業再編取引等
⇒研究開発体制
⇒無形資産に係る戦略
⇒無形資産開発施設一覧
⇒無形資産の所有者一覧表
⇒無形資産の契約一覧表
⇒無形資産取引に係る移転価格ポリシー
⇒無形資産の譲渡等
⇒資金調達方法
⇒中心的な金融機能を果たす会社
⇒金融取引の移転価格ポリシー
⇒連結財務諸表
⇒APA(税務ルーリング)の状況
⇒その他項目

この羅列された目次を、少し体系的な目次に見えるよう構成を変えてみます。

【マスターファイル目次】
1.多国籍企業グループの組織構造と事業概要
 ① 構成会社一覧(役員一覧、株主一覧)
 ② 事業概要
  ⅰ 事業概要
  ⅱ 営業収益の源泉(当社の強み)
  ⅲ 主要商品(製品)の概要(サプライ・チェーン図含む)
  ⅳ 主要商品(製品)の市場の概要
  ⅴ 役務提供取引に関する重要な取極め
  ⅵ 機能・リスク・資産分析の概要
  ⅶ 対象年度の重要な事業再編取引等
2.無形資産
 ① 研究開発体制及び無形資産の所有に係る戦略
 ② 無形資産開発施設一覧
 ③ 重要な無形資産の種類及び所有者一覧
 ④ 無形資産に関する重要な取極め
 ⑤ 対象年度の重要な無形資産の譲渡等
3.金融活動
 ① 資金調達方法の概要
 ② 中心的な金融機能を果たす構成会社
 ③ 金融取引に関する重要な取極め
4.財務状況
 ① 連結財務諸表
 ② APA(税務ルーリング)の状況
5.その他項目

このように体系立ててみるとマスターファイルも作成できそうな気がします。この目次を確認した後に、前回のマスターファイル記載項目の文字の羅列(措規第22条の10の5第1項)を改めて確認してみてください(http://futureworks-inc.jp/blog/622)。多くの方は法律の文章を読むことにアレルギー反応を起こしてしまっているだけと分かりますね。

さてこの目次に内容をはめていきます。会社名はAAAとし、構成グループはAAAグループとします。

【マスターファイル目次】※太字部分が実際のマスターファイルに記載される部分
1.多国籍企業グループの組織構造と事業概要
① 構成会社一覧(役員一覧、株主一覧)
AAAグループの構成会社等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地並びに当該構成会社等の間の関係を系統的に示した図は次の通りです。
⇒図表の挿入(項目:構成会社名称、略称、所在地、出資会社、所有割合、役員氏名、主たる事業の内容)
② 事業概要
ⅰ 事業概要
⇒文章の挿入(文章の中で事業をセグメントに分類する)
ⅰ-1 ○○○事業
ⅰ-2 □□□事業
ⅰ-3 △△△事業
※それぞれの事業において関連する製品等の写真を載せると印象がよくなります。
ⅱ 営業収益の源泉(当社の強み)
AAAグループの主な営業収益の源泉(強み)は、次の通りです。
⇒自社の強み(他社優位性)を4~5個くらい列挙
ⅲ 主要商品(製品)の概要(サプライ・チェーン図含む)
AAAグループにおける主要商品(製品)群は次の図表の通りです。これらの商品(製品)群以外に、AAAグループにおいて連結売上高に占める割合が5%超の商品(製品)はありません。
⇒上位5種類の商品(製品)の種類と概要を図表に含める。その他に5%超の商品(製品)がある場合にはそちらも列挙。
また、これらの商品(製品)群に係るサプライ・チェーン図は次の図表の通りです。各商品(製品)群のサプライ・チェーンは概ね同様のために、同図表ではAAAグループのサプライ・チェーン図を記載しています。
⇒サプライ・チェーン図の挿入
ⅳ 主要商品(製品)の市場の概要
AAAグループにおける主要商品(製品)群に係る地域別売上高は、次の図表の通りです。
⇒上記の商品(製品)群の図表と同種類の商品(製品)群の地域別の売上高及び市場の状況を記載
ⅴ 役務提供取引に関する重要な取極め
AAAグループ内において行われる役務提供(研究開発や無形資産に係るものを除く)の内、役務提供取引に関する重要な取極めは、次の図表の通りです。
⇒図表の挿入(項目:取極め、役務提供者、役務受益者、取極め内容、対価設定方針)
※ポリシーの部分をどこまで厚く書くかは会社によって異なる部分です。詳しくは、http://futureworks-inc.jp/blog/610こちらをご確認ください。
ⅵ 機能・リスク・資産分析の概要
AAAグループの構成会社が遂行する機能、負担するリスク、使用する無形資産は、次の図表の通りです。
⇒図表の挿入(機能・リスク・資産の各項目、究極の親会社の所在国、製造機能の構成会社、販売機能の構成会社)※機能、リスク、無形資産は縦の項目として分類することが通常。横軸の構成会社は基本的に機能で分類する。◎〇△×などの評価基準を設けて、それぞれのエンティティがどのような役割を担っているか一覧できる表を作成する。
ⅶ 対象年度の重要な事業再編取引等
対象年度に行われた重要な事業再編取引等はありません。

この後に無形資産・金融取引の各項目が続きます。この2つの部分はノウハウ含まれ、会社ごとに異なる部分なので説明は割愛しますが、それ以外の部分(上記で説明した部分)については、会社の概況情報なのでどの会社も作成することが可能(機能・リスク・資産の整理表はノウハウが必要なために注意)かと思います。

移転価格ポリシーをコンサルに頼んで作成するのであれば、コンサルが無形資産の整理・金融取引の整理を行ってくれますので、それを其のままマスターファイルに当てはめればマスターファイルの主な部分を自社で作成することが可能です。

世界的に移転価格が重要な概念になってきている昨今では、少しずつ移転価格ドキュメントの内容(作成方法)も表に出てきています。ネットや書籍を駆使すれば、マスターファイルやローカルファイルを自身で作ることも可能な時代になりつつあります。もう少し時が流れれば、移転価格ドキュメントは更に一般的なものとなり、自社で作成した移転価格ドキュメントをコンサルがレビューして、移転価格リスクをどのように逓減させていくかを検討する(顧問業務のような形)が一般化されるように思います。
※お客さんの既存スキームや新規スキームに対する税務リスクの洗い出し、検証、改善という税務アドバイザリーが今後の会計コンサルのメイン業務に。決算書、申告書、移転価格ドキュメントなど、会計コンサルの現在の主な“形式的な”成果物は税務リスクを洗い出すためのツールという位置づけに成り替わります。既に流れは始まっていますが、AI会計の発達により、さらにこの流れが加速します。

今はまだ移転価格ドキュメントの作成が主な目的となってしまっています(各国の税制改正に合わせるためにしょうがないのでしょう)が、大切なことは「どうやって移転価格リスク(を含む税務リスク)を減らすか?」に尽きます。移転価格ドキュメンテーションの中には、役務提供、無形資産、研究開発、親子ローンなどの税務調査で問題になりやすい項目が網羅的に記載されることになります。つまり、移転価格の検証(ドキュメンテーション)をすることは、現在日本の税務調査で指摘されることが多い「国外関連者に対する寄附金課税」の諸問題を網羅的に確認することにもなるのです。

アメリカなどの移転価格が発展した国においては、寄附金の概念が少しずつ消滅してきており、移転価格による指摘(国内取引においても)が主なものとなってきています。今後の国際ビジネスはこの「移転価格税制」と「PE認定課税:(参考)http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/16857392.html」が主な指摘項目になってきますので、ご認識をよろしくお願いします。

当社ではマスターファイル、ローカルファイル(インドネシア、タイ、日本)の作成及びその後の国際税務アドバイザリーを行うことが可能ですので、これらの業務につきお困りのお客様がいらっしゃいましたら、お気軽にお問合せいただければ幸いです。

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