インドネシアの移転価格税制④ ~日系企業の移転価格文書の保存義務~

2017 年 3 月 31 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。昨日3月30日にインドネシア移転価格税制のセミナーを行いました。2週前からの急な募集にもかかわらず多くの方にご出席いただきましたこと大変嬉しく思っております。改めて御礼を申し上げます。今後もインドネシア、日本において移転価格税制のセミナーは頻繁に行ていこうと思っていますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

さて、本日はインドネシアの移転価格税制の「問題点」について確認していこうと思います。2016年12月30日に財務省規制としてNOMOR 213/PMK.03/2016(以下「PMK-213」と言います。)がOECDのBEPSプロジェクトに基づいて発行され、インドネシアにおいても今後移転価格税制の対応が迫られています。このPMK-213を確認してみると、インドネシアにおいて移転価格文書の保存が必要な会社は大企業だけには留まらず中小企業(厳密には日本親会社と取引をしているすべての会社)においても、その保存が求められているというところに大きなポイントがあり、今後どのように対応するかを各社、具体的に検討しなければなりません。

※PMK-213原文(参考):

http://www.jdih.kemenkeu.go.id/fullText/2016/213~PMK.03~2016Per.pdf

前回のコラムにおいて、マスターファイル・ローカルファイルの記載内容に齟齬はなく、“その他の詳細事項”に齟齬があり各社の判断が必要と記載いたしましたが、その一部に触れてみましょう。

PMK-213の2条2項に、マスターファイル及びローカルファイルの保存義務について記載されています。

【保存義務(抜粋)】

関連者間取引を行っている納税者で、次の①~③の条件に一つでも当てはまる場合には、マスターファイル及びローカルファイルを保存しなければならない。

①前年度の総収入額が500億ルピアを超える納税者

②関連者間における有形資産取引が200億ルピアを超える、又は、無形資産取引等が50億ルピアを超える納税者

③インドネシアよりも低税率(所得税)の国の関連者との取引を行っている納税者

マスターファイル及びローカルファイルの保存については、このような記載がされています。そして、ここに齟齬が含まれてしまっているのです。改めて日本の取扱いも含めて一連の流れを抜き出して追いかけてみましょう。

【一連の流れ】

①マスターファイル及びCbCレポートについては“究極の親会社(究極の親会社とはグループ全体の親会社をいう。ここでいう究極の親会社とは日本親会社を指す。)”が作成します。

②日本におけるマスターファイル及びCbCレポートは“究極の親会社の前年度の売上高が1,000億円以上” である場合に作成します。

③インドネシアにおけるマスターファイル及びローカルファイルの保存義務は、“前年度の総収入額が500億ルピアを超える場合”、“関連者間における有形資産取引が200億ルピアを超える、又は、無形資産取引等が 50億ルピアを超える納税者”、“インドネシアよりも低税率(所得税)の国の関連者との取引を行っている納税者”この三点のいずれかに該当する場合です。

お分かりになられた方も多いと思いますが、日本の親会社においてはマスターファイルの作成義務がない場合でも、インドネシアの国内法(PMK213)に則るとインドネシアにおいて“存在しないはずの”マスターファイルを保存しなければならないのです。また、日系企業がマスターファイルを保存するか否かの判定については、三つめの条件“インドネシアよりも低税率(所得税)の国の関連者との取引を行っている納税者”により、規定上は”全ての日系企業”がマスターファイルを保存する義務が生まれます(日本税率:23.4%、インドネシア税率:25%)。

規定上は”全ての日系企業”となってしまいますが、移転価格リスクが高い会社・低い会社によってその対応は異なるべきと我々は考えています。そのためにまずは移転価格のリスク診断を行い、リスクが高く移転価格のドキュメンテーションが必要とされた会社に対して移転価格ドキュメントの作成を行おうと考えております(段階的な移転価格対応)。本来移転価格ドキュメントに関しては、中小企業はその対象としないようにBEPSプロジェクトの行動13によって配慮が求められているものです。もちろんPMK213という規定がある以上はそれに則って移転価格の対応はしなければなりませんが、全て一律に、かつ、網羅的に行うということは些か乱暴かなとも思っています。まずはクライアントに合わせてどのように対応するかヒアリングベースから始めさせていただきますので、ご興味がございましたら是非お問合せ頂ければと思います。

来週の移転価格コラムの内容は、「過去日本と中国の規定に齟齬があった場合にどのように取り扱われたか」を執筆します。中国も日本も同時期に移転価格関連の税制改正を行いましたが、細かな保存規定にはやはり齟齬がありました。実務上、当該齟齬がどのように取り扱われたかを私の経験に基づいて執筆いたしますので、ご期待ください。それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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