インドネシアの移転価格税制③ ~行動13・ローカルファイル~

2017 年 3 月 24 日

皆様こんにちは。フューチャーワークスの片瀬です。来週の3月30日にインドネシアにおいて移転価格税制のセミナーを行います。事前からかなりの反響がありインドネシアの移転価格税制に皆様困られていることが良く分かります。特に12月決算の会社における移転価格文書の作成期限は4月30日であり、もはや一刻の猶予もありません。ただ、ふたを開けてみれば肝心な「マスターファイルとローカルファイルの要約表」が電子申告では提出できず、紙ベースで提出しなければならない(電子申告と紙ベースでの提出を両方行う必要がある)など、まだまだ整備されていない印象は拭えません。このような中で、いきなり税務当局から移転価格調査に入られることは可能性としてはかなり低いと思っています。ただし移転価格調査のポイントとなる上記の「マスターファイルとローカルファイルの要約表」は必ず提出するようにしていただければと思います(その他、赤字企業というキーワードも移転価格調査の大きなポイントとなりますのでご注意ください)。

さて、今回のコラムのテーマはBEPSプロジェクト行動13に規定する「ローカルファイル」についてです。BEPSプロジェクトの行動13においては、マスターファイル・ローカルファイル・国別報告書(CbCレポート)をそれぞれ作成するように謳われているのですが、行動13の各ドキュメントの説明文の前段の部分において「下記の内容をマスターファイルに記載“すべき”」という文言で書かれており、あくまでも強制力を持ち合わせているものではありません(ただし、現状ほとんどの国がこの行動計画における“マスターファイル・ローカルファイルの記載内容”に従って国内法を整備しています)。インドネシアにおいても、この行動13に従って国内法を整備しており、マスターファイル・ローカルファイル・CbCレポートに記載すべき内容は各国のそれと変わるところではありません。

それでは早速ローカルファイルの記載内容を見てみましょう。

【ローカルファイル】

(1)対象事業体

・対象事業体の経営ストラクチャー、組織図及び対象事業体の経営報告先となる者及び当該者の主要事務所の所在国に係る説明。

・当年度又は直近の年度において対象事業体の関与または影響のあった事業再編や無形資産譲渡に関する説明、対象事業体に影響を与えた取引の説明。

(2)関連者間取引

事業体が関与する重要な関連者間取引カテゴリーごとに、以下の情報を提出する。

・各関連者間取引(製造に関する役務の調達、商品購入、役務提供、ローン、無形資産ライセンス等)と取引背景(事業活動、MNE の金融活動、費用分担契約等)の説明。

・関連者間取引カテゴリーごとの取引累計額。

・関連者間取引カテゴリーごとの関連者間取引に係る関連者の特定と、関連者間の関係。

・文書化された関連者間取引カテゴリーごとの納税者及び関連者の詳細な機能分析(すなわち、果たす機能、使用若しくは寄与した資産(無形資産含む)と負担するリスクに関して、前年との比較を含め記載)。

・文書化された関連者間取引価格に直接又は間接に影響を与える可能性のある、納税者の他の関連者間取引の特定と説明。

・取引カテゴリーごとの最適な移転価格算定手法及びその算定手法を選択した理由の説明。

・必要に応じて、どの関連者を検証対象企業としたかの明示及びその理由の説明。

・移転価格算定手法を適用するに当たっての重要な前提条件の要約。

・必要に応じて、複数年度検証を行う理由の説明。

・もしあれば、選定された比較対象取引(外部又は内部)のリストと説明。移転価格分析において依拠する独立企業の関連財務指標情報(比較対象取引の選定方法及び情報源に関する説明含む)。

・差異調整の説明、差異調整の実施対象(検証対象企業か比較対象取引かあるいはその両方か)の明示。

・選定された移転価格算定手法の適用に基づき、関連者間取引が独立企業原則に則り実施されたと結論付ける理由の説明。

・移転価格算定手法の適用に当たって利用された財務情報のサマリー。

(3)財務情報

・対象事業体の対象年度の財務諸表。もしあれば、監査済財務諸表を提供し、なければ未監査財務諸表を提供する。

・財務諸表に基づく移転価格算定手法の適用に当たって利用された財務情報と切出工程表。

・分析で使用された比較対象取引の関連財務データのサマリーとその情報源。

※記載されている情報が、マスターファイルの情報と重複している限りにおいてはマスターファイルにおいて参照することが可能です。

 

インドネシアのローカルファイルの記載内容は今後コラムにて執筆予定ですが、大まかには変わりません。インドネシアのローカルファイルの記載内容には、「関連する証憑類をしっかり残しているかを記載してください。」ということが書かれており、この部分だけBEPSプロジェクトのローカルファイルの記載内容とは異なります。

また、このローカルファイルは移転価格文書の中でも一番大切なものでもあります。このローカルファイルには料率等が記載されることになり税務当局はこの料率等を否認してくるのです。マスターファイルもCbCレポートもそれをもって税務当局から否認されるわけではありません。マスターファイルは概況情報の確認のためにあるものですし、CbCレポートは正直移転価格調査の前の段階でどの企業に調査に入るかのふるいにかけるための資料です。そのためにこのローカルファイルをどのように作るかが移転価格文書作成の大きな鍵となります。(まぁ、実務上は多くの会社がTNMM:取引単位営業利益法によって簡便的にドキュメンテーションしていることが多いですが・・・)

さて先週に引き続き、BEPSプロジェクトの行動13の内容(マスターファイルとローカルファイル)を確認したのですが、このマスターファイルとローカルファイルにおいてはインドネシアのPMK213と行動13に大きな差異はなく、特段問題となることはありません。インドネシアにおいて問題となることはマスターファイル・ローカルファイルの記載内容ではなく、文書化義務者・文書作成時期などその他の詳細事項についてです。これらの部分については各国に一任されているものであり、統一のルールができていません。行動13の中には、文書化をするか否かの重要性の判断について「各国の文書化の規定には、重要性を考慮し納税者に過大な負担にならないように配慮する。特に中小企業は文書化の対象から外“すべき”」と記載されていたり、文書化の作成時期に関して「対象年度の税務申告までに作成することが“望ましい”」と記載されていたりするのですが、統一のルールではなくその他詳細事項については各国が自由に決めてしまっているという現状があります。つまり、強制力を持ち合わせていない行動13における弊害がマスターファイル・ローカルファイルの記載内容ではなく、その他の詳細事項に表れてしまっているのです。

来週からはこの行動13に従った日本の移転価格文書化のルールとインドネシアのPMK213との間にどのような齟齬が生まれ、どのような問題が今後顕在化するかを詳細に見ていければと思っています。

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