コロナウイルス感染拡大を受けた追加措置

2021 年 7 月 9 日

インドネシアでは6月中旬ごろから爆発的に感染者数が増えており、7月6日時点で一日の新規感染者数が3万人を超え、新規感染者数は過去最大となっています。大使館からのメールで確認している方も多いと思いますが、7日1日付で、感染拡大防止に関する追加措置が発表されましたので、弊社リーガルチームで確認した内容も踏まえて、主な点についてみていきたいと思います。

 

【Ⅰ.緊急活動制限】

もともと緊急活動制限(PPKM)が出されていましたが、さらに活動が厳しく制限されています。対象地域はジャワ島及びバリ島全域で、主に下記のような内容です。

  1. 必須分野(銀行やインフラ、情報通信など)以外のビジネス活動は、原則100%在宅勤務とする。
  2. 必須分野は50%の人員は在宅勤務とする。
  3. 飲食店の営業は、店内飲食禁止。デリバリーのみ。
  4. マスク着用義務
  5. 礼拝施設は閉鎖
  6. 国内移動には、1回目のワクチン接種証明書および、48時間以内の陰性証明書の提出がもとめられる。

 

国内での陰性証明書については、有効な陰性証明を発行できるクリニックが指定されました。

いまのところ7月20日までとなっていますが、これは暫定的な決定で、延長される可能性もあります。

なお、製造業の多くは必須分野に分類されていますので、工業省の許可を得れば、コロナ感染拡大防止のプロトコルへの遵守及び人員制限(場合によっては)をしたうえで、操業は認められているようです。

 

 

【Ⅱ.インドネシア入国及び入国後の措置】

インドネシア入国及び入国後の措置は主に以下の通りです。

  1. 外国人がインドネシアに入国する場合は、2回のワクチン接種証明書が必要
  2. 入国後の指定淑発施設での隔離期間が、もともと5日間だったのが、8日間へ延長
  3. 外国人の国内移動は、1回目のワクチン接種証明書の提出が求められる。

 

日本ではワクチン接種証明書の発行が、7月中旬以降となる見込みであるため、当面はインドネシアへの入国が難しいということになります。

 

 

【Ⅲ.ビザ査証発給要件】

現在発給が認められている査証について、申請にあたってさらに以下の制限がかけられました。

  1. PCR検査の陰性証明書の提出
  2. ワクチン接種証明書の提出
  3. 隔離に係る同意書への同意

 

このような状況下にあり、6月下旬ごろから、日本に一時避難をされる方が多くなっています。なお8月1日以降、海外在留邦人を対象に、日本に一時帰国してワクチン接種を行うことを希望する人を対象としたワクチン接種事業が日本政府によって行われる予定です。インドネシアでも、政府主導で、無料ワクチン接種プログラム(ゴトンロヨン・プログラム)が行われており、外国人も接種できることとされていますが、いまのところ接種できるワクチンの種類がシノバックなどに限られるようです。そのため、8月以降に一時帰国をして、ワクチン接種後にインドネシアに戻ることを検討されている方も多くなっています。

 

インドネシアでは政府発表が前日などに急に変更されることも多いですので、引き続き状況を注視していく必要があります。

 

年次財務報告書LKTPの提出義務

2021 年 5 月 17 日

商業省(Ministry of Commerce)が、20年3月19日に年次財務報告書(LKTP)の提出義務に関する大臣令を施行しています。これは、もともと1998年からあった法律で、歴史は古いのですが、提出方法が定まっておらず、長らく有名無実化していました。今回の大臣令の施行とともに、提出用のシステムが出来ています。いままで年次財務諸表は税務署にのみ提出をしていたかと思いますが、今後は商務省にも別途提出が必要となります。
20年はシステムが安定せず、やむを得ず提出できなかった企業も多いと思いますが、システムが安定した今年からは、より厳しく運用される可能性がありますので、留意が必要です。

【提出義務対象者】
LKTPの提出義務者は以下の通りです。
1. 以下のいずれかの要件を満たす企業
a. 公開会社
b. 公的資金配分に関連する企業(金融機関、保険会社等)
c. 証券会社
d. IDR 250億以上の資産を所有する企業
e. 銀行により年次財務報告書の監査を義務付けられている債務者

2. インドネシア国内に所在し事業を営む外国企業(支店、子会社、代理店及び契約の当事者となることができる代表事務所を含む)

3.国有株式会社、公社 及び地域会社

このうち、2.の外国企業に、外資企業は含まれていますので、外資企業はすべて提出義務があることになります。

【免除規定】
以下の当局に財務諸表を提出済みの企業は、商務省への提出を免除されます。
1. その他の規制当局
2. 金融庁など
3. 国営企業大
4. 財務大臣

公認会計士の規制当局である財務省が出している別の法令によって、財務省が各公認会計士に対し、クライアントの監査済み財務諸表の提出を求めているようです。監査を担当した公認会計士を通じて財務省に財務諸表を提出した場合、この免除規定によって、商務省への提出は免除されると考えられます。
会計監査が終わった後、監査人から財務省に財務諸表を提出していいか聞かれた企業があると思いますが、こうした事情によります。
ただし、財務省令の方は、外資企業のすべてが提出対象になっているわけではありませんので、財務省に提出していない場合は、別途商務省に提出する必要はあります。

【提出資料】
以下の公認会計士による監査済みの財務諸表をオンライン(PDF)で提出します。
a. 貸借対照表
b. 損益計算書
c. 株主資本等変動計算書
d. キャッシュ・フロー計算書
e. 借入・貸付に関する概要を示す財務諸表に関連する注記

【提出期限】
会計年度の終了から、6カ月以内に提出しなければなりません。

【行政制裁】
今回の改正で、未提出もしくは内容の不備に関する以下の制裁が定められていますので、留意が必要です。
・書面による警告
・商務省管轄の事業許可の取消

なお、提出した企業の財務情報は公開文書としてみなされ、書面による要請により公開される場合がある、とされています。
改正前の商務省令でも、外資企業は公認会計士の会計監査を受ける必要がありました。そのため、商務省に提出することはなかったものの、ほとんどの外資企業は毎年監査を受けていると思います。その監査済みの財務諸表を、年次法人税申告書に添付して、税務署に申告するのがいままでの流れでした。今後は税務署に提出の後に、商務省にも提出が必要になります。法人税申告書の期日は決算から4カ月以内、商務省へは決算から6カ月以内となりますので、スケジュールには十分ご留意ください。

インドネシアのVATに関するよくある誤解

2021 年 4 月 30 日

【前受金のVATの取り扱い

 

前受金を受領することがあると思いますが、今回はその際のVATと税務インボイス(Factur Pajak)の取り扱いについてです。

Proforma Invoice(仮インボイス)を発行して、Factur Pajakを発行せず、VATなしで前受けているケースがありますが、インドネシアの税法上、前受金はVAT課税対象となります。そのため、Factur Pajakを発行してVATも前受けの時点で認識・納税をする必要があります。

VATの認識は、「物・サーボスの提供か、支払いのどちらか早い方」で認識することになっているためです。(VAT課税法 Article 11 (2))

 

一方で日本では、前受金に対して消費税は非課税ですので、この点取り扱いが異なります。

「消費税の課税資産の譲渡等や課税仕入れの時期は、所得税、法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しやサ-ビスの提供があった時とされる。したがって、例えば、工事代金の前受金を受け取ったり、機械の購入について前払金を支払っていたとしても、その受取や支払の時期に関係なく、実際に引渡しやサ-ビスの提供があった時が売上げや仕入れの時期となる。」(消基通9-1-27、11-3-8、所基通37-30の2、法基通2-2-14)

 

一部の業界慣行で、継続的な性質を有する取引基本契約においては、買主の売買代金支払債務を遅滞した場合に備えて、買主から売主に対し、「保証金」が差し入れられることがあります。

オフィスやアパートのデポジットのように、返還可能な(Refundable)差し入れ保証金は非課税ですので、前述のケースの保証金も非課税ですが、契約書上で、VAT課税対象の前受金と非課税の保証金を明確に分けておくことが大事になってきます。

保証金の返還の際に、業務委託費と相殺などをすると、保証金も実質前受金であったと見なされることがありますので、留意が必要です。

 

【割賦払い・分割払いについて】

 

割賦払いにする場合は、通常課税物品の引き渡しが先に発生するかと思います。前述のVAT課税法に基づき、引き渡し時点で全額に対するVATを認識・納税することになります。この場合、全額のインボイスと全額のFactur Pajakを発行したうえで、別途割賦払いの契約を結んでおくことになります。したがって先にVAT分だけキャッシュが出ていくことになります。もともと割賦払いの場合は利息を考慮すると思いますが、さらにVAT分まで留意が必要ですので、金額設定には要注意です。

分割払い都度、その分だけのインボイスとFactur Pajakを発行しているような場合は、課税物品引き渡しからの未納を指摘される可能性はございます。

 

【会計の売上認識とVAT-OUTの認識のずれは問題?

 

よくインドネシアで、「会計の売上認識とVAT-OUTの認識のずれは問題になるので、会計で売上を計上したら、その分のVATは払わなければならない」といわれます。たとえば、工事進行基準で売上を認識する場合は、その売上計上に伴ってVATを納税しなければいけないという話です。これはインドネシア人経理の多くが誤解をしていることの1つです。こうした勘違いから、納品、売上計上、VATの3つのタイミングと合わせるために仕方なく工事完工基準で処理をしているケースがあります。

実際には、工事進行基準で会計処理をして、VATは納品もしくは支払を受けたタイミングで認識することは問題ありません。「前受金のVATの取り扱い」の項で述べた通り、VATの認識は、「物・サーボスの提供か、支払いのどちらか早い方」で認識することになっているためです。

 

こうした勘違いは、税務署の権限が強いことに起因しているかと思います。税務調査の初期の段階において、会計上の売上×10%が、VATとしてその期に申告されているかどうかを調べられます。前述の通り、会計の売上認識をしても税務上のVATを認識しないことはあり得ますので、本来であれば、会計上の売上×10%という計算は何の意味もないのですが、申告金額との差異があった場合に、原因を税務署に説明できないと、VATの未納があるとみなされて追徴を受けることがあります。逆に言えば適切にレコンシリエーションを作成して説明できれば全く問題ないのですが、能力的にこれができないインドネシア人経理は多いです。こうして追徴を受けた過去の自身の経験から、会計上の売上認識=VAT納税、という理解をしている方が多いのだと思います。

 

ただし、前述の通り、前受金を受領したらVATは認識しなければいけませんので、建設業などで工事進行基準を採用している場合はその点留意が必要です。

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