183日ルールにまつわる誤解

2019 年 3 月 31 日

今日は183日ルールに関してです。

183日ルールとは、1年に183日以上インドネシアに滞在するとインドネシアの居住者と見做される、というよく知られたルールですが、この183日という数字は、インドネシア所得税法と日イ租税条約の2つで出てきます。

 

この2つの関係性について、混乱がよく見られます。

よくある混乱としては、下記のようなものがあります。

「KITASを取得していても1年に183日滞在していなければ居住者ではない。つまりインドネシアで全世界所得課税で税金を納める必要がない。」

「租税条約が優先される。そのため、KITASを持っていても居住の意思はなく、かつ183日以上滞在していないために居住者ではなく、NPWP(納税者番号)の取得も必要がない」

 

 

結論からいうと、厳密にはKITAS(1年のもの。6ヵ月とKITAS Bandaraという1ヶ月のものはグレーゾーン)を取得した時点でNPWPの取得義務が発生し、インドネシアで確定申告をする必要が出てくるのですが、

今回は、この論点を整理したいと思います。

 

 

インドネシア所得税法では、該当する183日ルールは、具体的には下記のような文言です。

 

<インドネシア所得税法>

Article 2

(3) The term “resident Taxpayer” means:

  1. individual who resides in Indonesia, an individual who has been present in Indonesia

for more than 183 (one hundred and eighty-three) days within any 12 (twelve)

months period, or an individual who has been residing in Indonesia within a

particular taxable year and intends to reside in Indonesia;

 

 

上記より、インドネシア所得税法の居住者の要件としては、

  1. 「任意の1年間」で183日以上インドネシアに滞在している
  2. インドネシアに滞在していて、インドネシアに居住する「意思」がある

のどちらかが当てはまれば、その時点で居住者となります。

 

また、日イ租税条約では、該当する183日ルールは、具体的には下記のような文言です。

 

<日イ租税条約第十五条>

 

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)報酬の受領者が当該年を通じて合計百八十三日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。

(b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。

 

 

ここでのポイントとしては、租税条約は、2重課税を防止することが目的であって、「居住者判定」をすることではない、ということです。

 

 

実際に租税条約第4条では下記のような文言となっております。

 

第四条

1 この協定の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。

2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、両締約国の権限のある当局は、合意により、この協定の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

 

そのため、前述の租税条約第十五条は、「それぞれの国で居住者判定後」であることが前提であることがお分かりいただけるかと思います。(a)~(c )に該当するからといって、居住者ではない、ということではありません。

居住者判定そのものは、インドネシア国内法によって行われます。

 

 

一般に、KITASを取得すると、所得税法上の居住者に該当する、インドネシアに居住する「意思」があると見做される可能性があります。(この際租税条約は関係ありません)

インドネシア居住者はすべてNPWP(納税者番号)を取得して、全世界所得課税でインドネシアで納税することになります。

 

 

以上が厳密に解釈したロジックですが、

実施にはKITASを持っていてNPWPを持っていないという方もいらっしゃるのではないかと思っています。

指摘リスクを考慮いただいた上で、ご判断を頂ければと思います。

 

個人所得確定申告の留意点

2019 年 1 月 15 日

今回は個人所得確定申告についてです。

個人の課税期間は1月1日から12月31日までの暦年で、確定申告は翌年の3月31日までに行います。

インドネシアでは全世界所得課税方式を取っていますので、日本側で支給された給与も合算して申告をすることになります。

確定申告時に合算する日本の所得に関して、総支給額(グロス)を使うか、社会保険料等を控除した手取り額(ネット)を使うか、という問題がありますが、

社会保険料等は、本来は個人のベネフィットであり、代わりに会社が支払っているだけですので、厳密には社会保険料を控除する前の総支給額(グロス)を使うこととなります。

 

 

 

■インドネシアでの確定申告対象者

KITASを取得しているが、NPWPを取得していない(かつ1年のインドネシア滞在日数183日以下)という方について、「インドネシア居住者とならないので、インドネシアでの納税は不要」と誤解をされているケースがあります。

しかしながら、そもそもインドネシアで納税するというロジックは、①KITASを持っている⇒②インドネシアに居住する意思がある⇒③居住者扱いになる⇒④NPWPを取得しなければならない⇒⑤全世界所得をインドネシアで確定申告

という流れになります。

 

居住者でNPWPを取得していない場合は、一応罰則規定もございます。

そのため、もしもKITASを取得していて、NPWPを取得していない場合は、速やかに取得・納税するのが安全です。

 

■赴任初年度の処理

KITAS及びNPWPを取得した月から、全世界所得課税となりますが、

KITASを取得してからNPWP取得まで手続きに時間を要す場合があります。

こういったケースですと、KITAS取得月とNPWP取得月が異なり、どちらを基準に納税するのか、という問題があります。

前述の通り、KITASを持っている時点で税法上の居住者扱いになりますので、KITAS取得月からの課税となると考えられます。

なお、赴任初年度は、後述する予納(PPh25)がありませんので、毎月の納税はインドネシア支給分のみに対する課税分(PPh21)のみとなります。

 

■帰任時の処理

帰任時の処理については、留意事項が多くございます。

まず、インドネシアでは予納(PPh25)という制度があります。これは、前年度の確定申告に基づいて、前年度の総納税額を12ヶ月で割って、毎月納税をする、という制度です。

例えば、前年度に確定申告追納も合わせて合計で120Juta納税していたとしたら、120Juta/12 = 10 Jutaルピアを毎月納税することになります。

ここで前年度の総納税額は、当然ながらボーナス等も含んだ課税所得に対して算出された税額です。

例えばボーナス月が6月・12月で、5月に帰任になった場合に、この予納を5月まで続けていると、必然的に納税しすぎているという状態(還付請求ポジション)になります。

帰任時期が決まっており、確実に過納税になる予定であることを税務署に証明できれば、この予納を止めることもできるとされていますが、実務上はかなり困難です。

この場合、

①予め前年度のボーナス支給額を調整しておく

②ペナルティー覚悟で予納(PPh25)の支払いを止める

③予納を続けて、多少の過払いを容認する

④予納を続けて、還付請求をする

という選択肢があるかと思います。

 

④の場合は、確実に個人に対する税務調査が入ることになります。

日本側の所得証明、源泉徴収票、銀行明細などの追加の書類提出を求められ、調査も長期に渡ることが多いことから、可能な限り還付請求はしないようにすることが肝要です。

 

また、帰任した月までの所得をインドネシアで確定申告することになりますが、帰任時には受け付けてもらえず、翌年1月以降にならないと受け付けてもらえない税務署が多いです。(所轄の税務署によります)

この場合、インドネシアのコンサルタントなどに委託して、翌年に確定申告を済ませてもらうことになりますので、事前の計算と委託先の選任が必要になります。

 

 

 

来月末が期限ですので、納税額の確認や手続きを事前に行っておくことをお勧めいたします。

 

退職金シミュレーション

2018 年 12 月 1 日

今回は退職金の計算についてです。

 

インドネシアでは、従業員が退職する場合、勤続年数に基づき、下表の通り「退職手当」と「勤続功労金」を退職金として支払う必要があります。

※実際は退職理由によって異なり、上記をベースにして整数倍して計算されます。

 

また、上記とは別に、「損失補償金」として、年次有給休暇の買い取り及び上記の退職手当・勤続功労金の15%の支払いが必要となります。

 

上記3つの退職金「退職手当」、「勤続功労金」、「損失補償金」について、勤続年数別にシミュレーションした結果が下図の通りです。

 

条件:

解雇時の固定給10Jutaルピア/月

整理解雇(経営の合理化)

 

 

見ての通り、勤続功労金が上乗せされる3年目~4年目の間が急なカーブになっているかと思います。勤続年数7年~8年で20か月分の計算となり、インドネシアの労働法が労働者の保護に手厚いといわれている所以でもあります。

 

なお、退職金は基本給+固定手当(毎月一定で支給される手当)を基に算出されます。

そのため、変動給(皆勤手当など)を設けてバランスを考えることが肝要です。

ただし、固定給は全体の給与の75%以上を占める必要があります。

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