法人税申告書のチェックポイント

2022 年 4 月 8 日

12月決算の会社は、法人税申告書の期日が4月末までになります。インドネシアは12月決算にしている会社が多いので、今月に法人税申告の期限を迎える企業は多いと思います。そこで、今回は法人税申告書の流れとチェックするポイントについて見ていきたいと思います

 

期限

前述の通り申告期限は原則4月末までとなります。外資企業は法人税申告の前にまず会計監査を受ける必要がありますが、監査が終わっていない場合には、2か月まで延長申請ができますので、最長6月末までが期日となります。その場合、監査事務所から延長するためのレターを発行してもらう必要があります。4月末ぎりぎりに依頼すると監査事務所も対応できないこともあるため、余裕をもって延長申請をしておくことが必要です。

また、課税所得があって納税が発生する場合には、納税の期日はあくまで4月末までとなり、延長はできません。未納分にはペナルティーが課せられるため、課税所得が発生しそうな会社は、4月末までに会計監査と法人税計算を終わらせるか、どうしても終わらない場合は、見積もりである程度納税しておくことが重要です。

 

流れ

法人税申告の流れは以下の通りです。

  • 会計監査の完了(法人税額自体は、この際にすでに計算されている)
  • 法人税申告書の作成
  • 法人税の納税
  • 法人税の申告

 

申告書の内容とチェックするポイント

すべて目を通していただくのが本当は望ましいですが、インドネシア語ですし、申告書の内容・金額をすべて細かくチェックするのは、忙しい経営者にとっては現実的でないかもしれません。そこで、最低限チェックすべきポイントを見てきたいと思います。

 

<課税所得と追納額の計算>

法人税申告書は、課税所得と追納額の計算から始まります。

会計上の利益に、損金とならない費用や、益金とならない収益などを加減算して、税務上の利益(課税所得)を計算しますので、会計上の利益と税務上の利益は通常一致しません。この税務上の利益に対して、法人税を乗じて、前払の法人税(PPh22やPPh23)があれば控除します。この差額が、4月末までに納税する法人税追納額になります。法人税等は会計上も計上されるため、これらの計算は、前項の流れの①会計監査の完了前までには行われていなければなりません。したがって、会計監査が完了するまえに、以下の点を確認いただくことが重要です。

 

最低限チェックしておくべき主な加減算の項目は以下の通りです。

 

✓ 社宅費(光熱費・インターネット含む)、ビザ取得関連費用は損金不算入 (ただし、これら現物支給については、22年度以降は給与として個人所得課税)

✓ 会社から提供される乗用車の取得・維持費の50%が損金不算入。

✓ 携帯電話代は50%が損金不算入だが、ユニフォームは損金算入可。

✓ 退職給付引当金・賞与引当金・貸倒引当金は損金不算入。ただし、DPLK(退職年金)への実際拠出額は損金算入可。

✓ 社内接待費・会議費・社員旅行・ゴルフは損金不算入。社内飲食費は全員に提供されるものであれば損金算入可。接待交際費(飲食)は台帳をつければ損金算入可。

✓ 販売促進費・広告宣伝費は台帳をつければ損金算入可。

✓ 保険を利用していない医療費は損金不算入。

✓ リース資産(使用権資産)の減価償却費・支払利息は損金不算入。一方でのリース料実際支払額は損金算入可。

✓ 資本金の4倍を超える借入金に対する、支払利息は損金不算入(過少資本税制)。ただし、純資産がマイナスの企業は、割合に関わらず全額が損金不算入。

✓ 銀行の受取利息は益金不算入

 

また、前払法人税を使用するためには、PPh22であれば輸入の際に支払った際の納付証明であるNTPNの番号を、PPh23であれば客先から源泉徴収票(Bukti Potong)を入手しておく必要があります。 取引が多いと、これらの書類の入手に時間がかかります。監査が終わったはいいが、源泉徴収票の回収漏れがあって、法人税の申告ができない、といったこともよくあります。したがって3月ごろまでには担当者に回収の進捗度を聞いておくことが望ましいです。

 

<会計・月次税務・年次税務の調整表の作成>

法人税申告書には、サービス費用や賃借料など、費用科目ごとに金額を記載していきます。税務調査時にはよく、この法人税申告に記載する金額と、1~12月までの月次の源泉税申告に記載されている金額の合計の不一致によって、源泉税未納のペナルティーを課せられることがあります。

たとえば、法人税申告書にはサービス費用(国内であれば通常2%の源泉税課税)として12億ルピアが記載されているのに、月次の源泉税申告のサービス費用合計が11億ルピアしかない場合、差額の1億ルピアに対して2%の源泉税漏れが疑われます。

もちろん、会計上サービス費用として計上しているが、源泉税がかからない取引であったり、期間計上の問題で年跨ぎの費用計上があったりすることもありますので、この差額の説明が適切できれば問題ありません。

しかし税務署から上記の回答を求められた場合、原則2週間以内に回答しなければならず、また、実際に未納があった場合は、指摘されて納税するのと自ら気づいて予め納税するのとではペナルティーの金額が大きく変わってきます。

したがって、この差異金額の原因調査・説明準備のために、法人税申告書作成の際に調整表(Equalization table) を併せて作成しておくことが望ましいです。

 

オムニバス法の条件付き違憲判決

2022 年 3 月 23 日

2021年11月25日に、雇用創出法(通称オムニバス法)に対し、「条件付き」意見判決が最高裁から出されました。オムニバス法は、2020年11月に78の既存の法律をまとめて改正したものですが、労働法・投資法・税法など多岐にわたる大きな改正であり、関連法規も併せて広範な影響を及ぼしていました。

違憲判決が出される場合、原則としてただちに無効とされますが、今回の「条件付き」違憲判決では、既存のオムニバス法及び関連細則を現時点では有効とし、2年間の猶予期間が与えられています。この猶予期間内に、適切な手順で改めてオムニバス法を改正しなければ、無効となります。「違憲判決がでたから、オムニバス法が無効となる」と勘違いして、就業規則の改訂などを見送っている会社もあるようですが、前述の通り今のところ有効です。裁判所の判決を受けて、政府は「適切な手順で改正を目指し、主な内容は今のオムニバス法と変わらないであろう」、という見解を発表しています。

 

今回は、オムニバス法の条件付き違憲判決とその影響について、詳細を見ていきたいと思います。

 

【背景】

オムニバス法は施行当時より、手続き上の瑕疵があるのではないかという指摘があった。これは、国会と大統領の承認を得た後に法案が複数回修正され、世に出回っているドラフトが複数存在するためである。当時政府は誤植や単語の誤りを訂正しただけであるとの見解を発表していたが、内容も若干修正されていることが後に判明した。これを問題視した大学生、教授団、非営利組織等が、オムニバス法の違憲判決を求めて集団訴訟を提訴した。

原告の主張は主に以下の3点。

  • オムニバス法という1つの法で、複数に跨る既存の法を改正する手法が曖昧である。オムニバス法では、それ自体が個別の新しい法律であるのか、既存の法案の改正であるのか、それとも既存の法律の廃止なのかが明確でない。
  • オムニバス手法で法を改正することは、インドネシアの既存法体系の中で、明確には認められていない。
  • 法が施行される直前に、複数のドラフトが作成されており、法に則った適切な手順を踏んでいない。

 

【判決の要旨】

9人の裁判官で審査された今回の判決では、裁判長を含む4人が合憲、5人が違憲判断をした。

立法過程には、最大限市民の参加を含む必要があるとして、今回の立法手続きには瑕疵があったことを認める。一方で、本法律をただちに無効とすることによる、影響の大きさを考慮し、当該瑕疵を「修正」するために2年間の猶予を与え、その間はオムニバス法及び既存の関連細則は有効とする。政府に対し、新たな施行細則の発行を停止するよう命ずる。猶予期間内にオムニバス法が改正されない場合には、同法は無効になることとする。

なお、本判決には遡及効果はない。仮に猶予期間内に瑕疵の「修正」が行われず、無効となった場合においても、その間にオムニバス法の則って行われた法行為を当然に無効とするものではない。

 

【違憲判決の影響】

ここでいう瑕疵の「修正」という点について、裁判所は意味を明確にしていませんが、立法手続に関する法律に則って、所定の段階を経て改正(再度施行)をすれば、瑕疵の「修正」ということになると思われます。前述の通り、政府は判決を尊重したうえで、ただちに法改正を準備し、是正措置を取るとしています。もともとオムニバス法は労働者側に不利な内容を含んでいたため、デモも一時起こっていました。国民も今回の違憲判決が、「条件付き」であるとは広く認知されておらず、違憲判決が反発の声を抑えることに一役買ってしまった、という意見もあるようです。

再度立法府の手順を踏んだ際に、最終的に否決されれば無効となりますが、猶予期間(2023年11月まで)は、2024年の大統領選前のため、現政権下で改正されることとなり、否決される可能性は低いと思われます。

オムニバス法は、特に労働法の改正では会社側に有利な点も多いですが、実際に適用するには就業規則の改訂が必要になる場合があります。今回の違憲判決のニュースを見て、改訂を様子見している会社もあるようですが、改訂を進めても問題ないといえそうです。

【2021年度確定申告】

2022 年 2 月 23 日

【2021年度確定申告】

 

今年も確定申告の時期になりましたので、今回は個人確定申告についてみていきたいと思います。

課税期間は1月1日から12月31日までの暦年で計算します。翌年3月31日までが申告・納税期日です。申告する所得について、総支給額を使うか、社会保険料等を控除した手取り額を使うか、というご質問をよく頂きますが、社会保険料等は、本来は個人のベネフィットであり、代わりに会社が支払っているだけですので、社会保険料を控除する前の総支給額を使うこととなります。

 

<課税方式>

国際的な個人所得課税の方式は、A.国内源泉所得課税方式B.全世界所得課税法方式の2種類があります。

 

Aの方式では、国内に源泉のある所得のみが申告・課税対象となります。ここでいう「源泉」は、英語では「ソース」にあたり、その所得がどこの国に起因しているかが重要になってきます。例えば給与の実際の支払い場所がインドネシアであっても、専ら日本にある法人のために働いて得た所得は、日本国内源泉所得、ということになります。A.の方式はシンガポールなどで採用されています。

Bの方式では、国内源泉所得のみならず、国外源泉所得も含めて申告・課税を行う制度です。こちらのほうがメジャーで、インドネシアでも全世界所得課税方式を取っていますので、日本側で支給された給与も合算して申告をすることになります。

Bの全世界所得課税方式では、場合によっては2重課税が発生することがあります。たとえば、日本の法人の役員報酬は、仮に日本の非居住者で、インドネシアに居住を置いている場合にも、日本で課税されます。これは、役員という地位の特殊性を考えたルールで、役員は全世界どこにいても、意思決定・業務執行が可能であると考えられるからです。この場合、インドネシアでも全世界所得課税がされるため、日本とインドネシアで2重で課税されてしまうことになります。

そこで、国家間で締結される租税条約において、こうした2重課税は排除されることになりますが、2重課税の排除の方法も大まかに分けて2つあり、①免税制度と②外国税額控除制度があります。①免税制度は、そもそも課税されない所得を定めておく制度であり、上記の例でいえば、日本で課税済みの役員報酬は申告しなくてよい、と定めている国などが該当します。一方で②外国税額控除制度は、いったん全世界所得を合算申告して計算しますが、外国で納税済みの額を、控除できる制度です。インドネシアでは外国税額控除制度を採用しているため、前述の例の場合、役員報酬であってもいったん合算申告したうえで、日本で納税済みの所得税を控除する計算をすることになります。

 

<インドネシアでの確定申告対象者>

 インドネシアでは、居住者全員が確定申告対象者になります。仮に外国で受け取っている給与がなく、0申告となる予定でも申告自体は済ませておく必要があります。なお、オムニバス法細則において、6カ月以上のITAS(就労ビザ)の保持によって居住性が判断されることが明記されましたので、1年のITASを保持しているにも関わらず、NPWP(納税者番号)を取得していないような場合は、速やかに取得・納税するのが安全です。

 

<赴任初年度の処理>

厳密にはITASを取得した日から居住者になりますが、 ITASを取得してからNPWP取得まで手続きに時間を要す場合があります。

全世界所得を計算する際に、どちらの国でも課税されないような空白期間が出ることは非常に問題です。日本側の人事部に、いつの分の給与から所得税が非課税になったのかをしっかり確認しておくことが肝要です。

また、赴任初年度は、確定申告をオンラインでするためのID・パスワードを、税務署から取得しておく必要があります。手続き自体は通常即日で終わりますが、3月末に近くなると税務署が忙しくなって対応が遅くなることもありますので、遅くとも2月には取得しておくことが望ましいです。

 

<デビットノートでの給与の立替精算について>

日本側でも給与を受け取っている場合、日本分は本社が一旦給与を立替えて、後にインドネシア法人に立替請求をしてもらっている方もいらっしゃるのではないかと思います。こういったケースの場合、この立替分は最終的に全額インドネシア法人が負担することになりますので、本来は確定申告の際に初めて申告するのではなく、毎月のPPh21の計算に含めて納税するが正しいです。PPh21の納税は、翌月10日ですので、タイムリーにデビットノートを請求してもらい、認識しておくことが必要となります。

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