インドネシアのVATに関するよくある誤解

2021 年 4 月 30 日

【前受金のVATの取り扱い

 

前受金を受領することがあると思いますが、今回はその際のVATと税務インボイス(Factur Pajak)の取り扱いについてです。

Proforma Invoice(仮インボイス)を発行して、Factur Pajakを発行せず、VATなしで前受けているケースがありますが、インドネシアの税法上、前受金はVAT課税対象となります。そのため、Factur Pajakを発行してVATも前受けの時点で認識・納税をする必要があります。

VATの認識は、「物・サーボスの提供か、支払いのどちらか早い方」で認識することになっているためです。(VAT課税法 Article 11 (2))

 

一方で日本では、前受金に対して消費税は非課税ですので、この点取り扱いが異なります。

「消費税の課税資産の譲渡等や課税仕入れの時期は、所得税、法人税の場合と同じように、原則として資産の引渡しやサ-ビスの提供があった時とされる。したがって、例えば、工事代金の前受金を受け取ったり、機械の購入について前払金を支払っていたとしても、その受取や支払の時期に関係なく、実際に引渡しやサ-ビスの提供があった時が売上げや仕入れの時期となる。」(消基通9-1-27、11-3-8、所基通37-30の2、法基通2-2-14)

 

一部の業界慣行で、継続的な性質を有する取引基本契約においては、買主の売買代金支払債務を遅滞した場合に備えて、買主から売主に対し、「保証金」が差し入れられることがあります。

オフィスやアパートのデポジットのように、返還可能な(Refundable)差し入れ保証金は非課税ですので、前述のケースの保証金も非課税ですが、契約書上で、VAT課税対象の前受金と非課税の保証金を明確に分けておくことが大事になってきます。

保証金の返還の際に、業務委託費と相殺などをすると、保証金も実質前受金であったと見なされることがありますので、留意が必要です。

 

【割賦払い・分割払いについて】

 

割賦払いにする場合は、通常課税物品の引き渡しが先に発生するかと思います。前述のVAT課税法に基づき、引き渡し時点で全額に対するVATを認識・納税することになります。この場合、全額のインボイスと全額のFactur Pajakを発行したうえで、別途割賦払いの契約を結んでおくことになります。したがって先にVAT分だけキャッシュが出ていくことになります。もともと割賦払いの場合は利息を考慮すると思いますが、さらにVAT分まで留意が必要ですので、金額設定には要注意です。

分割払い都度、その分だけのインボイスとFactur Pajakを発行しているような場合は、課税物品引き渡しからの未納を指摘される可能性はございます。

 

【会計の売上認識とVAT-OUTの認識のずれは問題?

 

よくインドネシアで、「会計の売上認識とVAT-OUTの認識のずれは問題になるので、会計で売上を計上したら、その分のVATは払わなければならない」といわれます。たとえば、工事進行基準で売上を認識する場合は、その売上計上に伴ってVATを納税しなければいけないという話です。これはインドネシア人経理の多くが誤解をしていることの1つです。こうした勘違いから、納品、売上計上、VATの3つのタイミングと合わせるために仕方なく工事完工基準で処理をしているケースがあります。

実際には、工事進行基準で会計処理をして、VATは納品もしくは支払を受けたタイミングで認識することは問題ありません。「前受金のVATの取り扱い」の項で述べた通り、VATの認識は、「物・サーボスの提供か、支払いのどちらか早い方」で認識することになっているためです。

 

こうした勘違いは、税務署の権限が強いことに起因しているかと思います。税務調査の初期の段階において、会計上の売上×10%が、VATとしてその期に申告されているかどうかを調べられます。前述の通り、会計の売上認識をしても税務上のVATを認識しないことはあり得ますので、本来であれば、会計上の売上×10%という計算は何の意味もないのですが、申告金額との差異があった場合に、原因を税務署に説明できないと、VATの未納があるとみなされて追徴を受けることがあります。逆に言えば適切にレコンシリエーションを作成して説明できれば全く問題ないのですが、能力的にこれができないインドネシア人経理は多いです。こうして追徴を受けた過去の自身の経験から、会計上の売上認識=VAT納税、という理解をしている方が多いのだと思います。

 

ただし、前述の通り、前受金を受領したらVATは認識しなければいけませんので、建設業などで工事進行基準を採用している場合はその点留意が必要です。

オムニバス法制定によるビジネスへの影響-③

2021 年 3 月 15 日

【オムニバス法制定によるビジネスへの影響-3】

オムニバス法制定によるビジネスへの影響についての各論点をみてきましたが、今回はオムニバス法細則についてです。

2020年11月に公布されたオムニバス法に関連する細則として、45の政令と4つの大統領令が2月に公布・施行されました。もともと、オムニバス法上では、「詳細は別途大臣令で定める」などとしている文言が多く、細則は2021年2月2日までに定められることになっていました。

実は、実際に細則が公布されたのは、期日から遅れて2月21日だったのですが、政府は2月2日のバックデートで公布・施行するという暴挙に出ました。中には効力の有効日をオムニバス法施行日(20年11月2日)に遡っている規定もありますので、対応を迫られる企業も多いと思います。この細則のうち、特に影響が大きそうなものをみていきたいと思います。

 

<国外源泉所得について>

オムニバス法のなかで、「一定の要件」を満たす外国人について、国外源泉所得を確定申告に含めなくてよいとあり、日本の役員も兼任しているような駐在員については、外国税額控除の手続きを省けるメリットが期待されていました。この「一定の要件」が別途細則で定められることになっていたため、注目されていました。しかし細則では、25種の高度専門人材に限られており、また、外国の公的機関から発行された資格証明などで技能を証明する必要があり、ほとんど対象者がいないと思われます。したがって、原則としては日本で役員の方も、いままで通り役員報酬を含む所得を合算したうえで、外国税額控除を受ける処理が必要となります。

 

<契約報奨金について>

法定退職金は、オムニバス法で正社員に対する退職金金額の計算が一部改訂され、実質減額となりました。その一方で、今回の細則で契約社員に対する「契約報奨金」が新設・明記されました。契約終了または満了時に支払われ、勤続12か月で固定給1か月分、12か月未満の場合は月割りで支給することになります。

既存の契約社員に対しても有効となり、起算日はオムニバス法の施行日の20年11月2日となります。なお、契約社員との契約は最大5年までとなるため、最大で固定給5か月分を支給する必要が出てきます。5年までなら契約期間を柔軟に設定できるようになった一方で、場合によっては正社員を登用するよりもコストが高くなるため、対応を迫られる企業も多いと思われます。

また、前述の通り起算日が20年11月2日となるため、この間に契約が終了または満了した契約社員から請求を受けた場合、支払う必要が出てきそうです。

 

<退職金の計算について>

法定退職金は、退職手当、勤続功労金、損失補償金の3階建てになっており、このうち退職手当は雇用関係の終了事由によって、倍率が決められています。たとえば、8年勤続した従業員の退職手当は9か月分となりますが、オムニバス法以前では合理化を目的とした整理解雇の場合は、2倍となるので、9カ月×2倍 = 18か月の退職金支給が必要でした。この倍率が、一部の事由について小さくなりました。つまり経営者よりに改訂されたことになります。主な変更点は以下の通りです。

 

組織変更(大株主の変更等): 1倍⇒0.5倍

合理化による解雇(赤字状態によるもの):1倍⇒0.5倍

合理化による解雇(いわゆる整理解雇):2倍⇒1倍

破産:1倍⇒0.5倍

警告書発行による懲戒解雇:1倍⇒0.5倍

定年退職(適格年金未加入者):2倍⇒1.75倍

 

ただし、多くの企業では就業規則で2003年労働法に基づく退職金を明記してしまっています。そういったケースでは、就業規則を改訂するまでは、2003年労働法の退職金計算が引き続き有効となります。

就業規則の改訂については、弊社で対応可能です。お気兼ねなくお問い合わせください。

オムニバス法制定によるビジネスへの影響-②

2021 年 2 月 16 日

【オムニバス法制定によるビジネスへの影響-②】

オムニバス法制定によるビジネスへの影響について、前回は労働法、付加価値税法、所得税法の3つをみてきましたが、今回はその他の論点(罰科金・外資規制)について、見ていきたいと思います。

 

(4)罰科金(Fine & Penalty)

いままで、税金に関する遅延利息は、月次2%で最大24か月(48%)で一律に計算されていましたが、遅延の事由に応じて、適用される利息が分けられることになりました。また、利率計算の基礎となる基準金利は、毎月財務大臣により決定され、公表されます。これは、2020年12月からすでに公表・運用されています。主な区分は以下の通りです。(利率が低い順)

 

  1. 月利=基準金利÷12

-法人税の申告延長後に発生した未払法人税

-税務調査結果に対して異議申立て、裁判の判決の結果、納税者側が勝訴した場合に得られる利息補償

 

b) 月利= (基準金利+5%)÷12

-修正申告の結果納税不足が判明した場合

-納税期日から遅延して納付した場合(もっとも一般的なケース)

 

  1. c) 月利 = (基準金利+10%)÷12

-税務調査中に、不正確な申告内容について、税務署から査定書(SKP)が発行される前に自発的に納税不足を申告した場合

 

d) 月利 = (基準金利+15%)÷1

-税務調査の結果、税務査定書が発行された場合に、追徴に課せられる利息

-VAT課税事業者登録をしてから3年以内に、販売活動を開始できなかった場合に、それまでに受けたVATの還付額に対して

 

特に影響が大きいと思われるものの1つとして、上記aの「法人税の申告延長後に発生した未払法人税」があります。法人税の納税及び申告は、決算後4カ月が期限で、間に合わない場合に、2か月の延長が受けられます。延長を受ける前の4カ月目において、見込みで法人税の納税をしておかないと、実際の法人税確定申告との差額は遅延ペナルティーの対象となります。会計監査を受けているような場合で、監査前と監査後の課税所得の計算が大きく異なるようなケースでは、多額のペナルティーを課されるようなこともありました。また、見込みの納税が過払になると還付請求=税務調査となるか、泣き寝入りをするかの2択を迫られるため、今回最も低い利率に分類されたことは、ビジネスに大きな影響があると思います。

なお、利率が最大となるdのケースでも、月利1.78%(2020年12月の利率)ですので、全体的にペナルティー額は低くなると考えられます。

 

 

(5)投資法

オムニバス法制定前は、ネガティブリストによって、外国資本から20の業種への投資が禁じられていました。これが6業種のみとなり、その他、一部の事業については、政府管轄事業となりました。それ以外については、原則開放されることになっています。まだ草案の段階ではありますが、いままで外資67%までの規制がかかっていた、ディストリビューターや、フォワーダーが外資に100%開放される見込みです。また、日系のコンビニエンスストアが撤退する要因にもなった、小売業への外資規制も、再度緩和されるという議論も出ています。

また、事業許可はいままで原則NIB(事業識別番号)取得をして、要件を自主的に満たせば事業開始ができていました。これは、個別に当局に承認を得るということではなく、自己申告による事後監査制でしたが、オムニバス法により、事業の種類によって4段階に分けられる、リスクベース・アプローチが取られることになりました。ここでいうリスクとは、安全、環境への影響などの事業の性質に基づいて定められた分類で、KBLI番号(インドネシア標準産業分類)ごとに分けられることになっていますが、具体的には細則で定められることになっています。4分類は以下のようになっています。

 

低リスク事業:NIB取得⇒事業開始

中リスク(低)事業:NIB取得⇒事業主による証書の提出⇒事業開始

中リスク(高)事業:NIB取得⇒政府による証書の発行⇒事業開始

高リスク事業: NIB取得⇒政府による事業許可の発行⇒事業開始

 

ネガティブリストからポジティブリストになったという説明がされることがありますが、いままでも実際にはKBLIコードとよばれる事業番号によって、「投資できる」事業内容が管理されていましたので、ネガティブリストかポジティブリストかという議論はあまり意味がないように思います。

 

 

なお、オムニバス法上では明確ではない各論点について、細則を施行後3か月以内に定めるとしており、2021年2月中に各細則が出てくるものと思います。特に、注目されるのが、労働法と投資法です。労働法については、就業規則への適用や、現従業員に退職金規定が適用されるかどうかなどについて、細則が出てくるものと思われます。投資法のポジティブリストについては、現行のものを引き継ぎつつ、一部規制が緩和される見込みですが、詳細が待たれるところです。

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